第4話 スルイスの村ー③

 ミー二は少年の案内の元、店を出ると洞窟に向けて歩き出した。太陽の日差しが強く、風があまり吹かないので、昨日よりも少し暑かった。


 店を出て、裏手にまわると少年は島の辺りを包む、雲の様子をうかがっていた。しばらく眺めていると少年はこっちと指差し、島の端に沿って二人は歩き始めた。


「たぶん、この先に洞窟があるとおもう。 むかし、雲の海までつづいているところがあるっておじいさんが言っていたから…… 今は人は通ってないけど、ペルートっていうコウモリが、さっき雲の中から出てきてたから洞窟自体はすぐ近くにあると思うんだ」


 ミー二たちは岩だらけの場所を歩き続けた。

 島の端には割れた大地の破片が中に浮かび、辺りを漂っている。

 星とは違い、重く安定している岩石は足を踏み外さなければ、問題なく足場として使える。ミー二は少年の手を取り、岩石の間を飛び移っていくと、下方向に少し開けた場所を見つけた。雲がかかっているため、確認しづらいが、洞窟の入り口があるように見える。

 ミー二は腰に付けた鞄から白い玉を取り出した。義手の人差し指と中指、薬指と小指をくっつけて、引き伸ばす。まとめた二本の指の間に魔術の糸で網を張ると、取り出した白い玉をひっかけて、強く引いた。

 うっすらと見える地面に向けて白い玉を解き放つ。玉は地面にぶつかると跳ねることなく破裂して、辺りの雲を掃った。雲が消えると無数の黒いコウモリが洞窟から飛び出してきた。


「見えた、洞窟だ。 そこそこ入り口は大きいね」


 ミー二と少年は下をのぞき込んで、確認をした。少年が降りるには少し高さがあったので、ミー二が先行して、岩から飛び降りて待ち構えると、落ちてくる少年を受け止めて、二人は洞窟に辿りついた。

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