第4話 スルイスの村ー②

「本当にこの服も貰っていいの? こんなに親切な人たち…… あったことがないよ。 それに竜とも戦うんでしょ。 それがおねえさん達の使なの?」


 少年はミー二たちの行動に純粋な疑問をぶつけた。そして、少年の口から出た使命という言葉に対して、ミー二は慎重に答えた。


「違うよ。 私たちに使。 これは仕事。 酒場をやっているのは人を助けるのに一番なのはご飯を届ける事だと思ったから。食事は命に直結してる。どんな人もおなかは空くからね。 あとは、その人がご飯をあつあつの状態で食べられるように色々手助けをしたり、戦ったりするんだ。 昔、そうやって私も助けて貰ったんだ。 ……英雄にね」


 ミー二は両手で少年の着たシャツを整えてあげると、丁寧に説明をした。


「私はね、たくさんの人と手をつなぎたいの。 だから、この義手が届くところにいるなら必ず助ける。 その後においしいものを食べさせる。 それがこの店、ホンスーンなんだ」


 ミー二はマスターのほうに振り返ると、マスターは腕を組んで頷いていた。


「少年。 村に戻ったらこの店の宣伝をしといてくれ。 店ぇ、直すのを手伝ってくれる奴には美味い飯を食わせるってな」


 マスターは腰に巻いる緩んだエプロンをなおして、少年にそう言った。


「私たちも助けが必要なんだ。 今、この店の上のほうが壊れていてね。できる限り早く直して行かなくちゃいけないところがあるんだ。 でも、あの竜は見過ごせない。お互いに必要な部分を支えあえたらなって思うんだけど…… 少年はどう思う?」


「僕もお店直すの手伝うよ。 村のみんなにも声をかけてみる。 それに竜はダージーンがいれば怖くないよ。 おねえさんも強いしね」


 ミー二は少年にありがとうと伝えると、黒の上着を羽織り、左腰後ろに鞄を備え付けて、大きな袋を背負って、装備を整えた。義手を魔術で再度調整して準備を終える。


「それじゃあ、洞窟に行こうか」

 

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