第4話 スルイスの村ー①

 ミー二は正午まで、カウンターに座り少年と話し込んでいた。

 この島には三つの村が存在しており、漂着したホンスーンから二番目に近い村に少年が住んでいることが分かった。ここからまっすぐに歩いていけば夕暮れには着くらしいが、昨日竜に襲われた道を通る必要があった。


「ぼくの村はスルイスっているところにあるんだ。 昔の家をなんかいも直して、おじいさんが子供の時から住んでる。 ……で、村を出て、カーサローアの森をとおって行くと、洞窟があって、そこにダージーンがいるんだ」


「それじゃあ、お昼ごはんを食べたら、少年の村まで行きたいけれど、他に道はない?」


 ミー二はできる限り少年を村へ帰してあげたかった。少年の親に連絡を取る方法がない中、少年を無事を知らせるには早く連れていく必要があった。さらに少年が居なくなったことで、村の辺りや竜がいた場所まで探しにでているだろう。気持ちはわかるが、対策なしに竜に近づけば、昨日の少年のように竜の力にあてられて被害が広がるだけだった。


「だったら、洞窟はどう? この島のあちこちにつながってて、多分このお店のすぐ近くにも村までつながる洞窟があるとおもう。 でも、まっくらでなにも見えないけど」


 洞窟であれば竜に襲われる危険が少ないと考えたミー二は頭の中で、必要な道具を揃え始めた。


「ほら、食いな。 久しぶりのお客さんだ。 歓迎するぜ」


 そういってマスターはありったけの食材を使った昼食をミー二と少年に差し出した。

 肉に魚、エーレの畑でとれた野菜。ミー二は頭の中に並べた洞窟を進むのに必要な道具が在庫の二文字に塗りつぶされた。


「村があるなら後でいくらでも仕入れができる。 少年の話じゃ、そのカーサローって森には生き物がいるんだろう? 何とでもなるさ。 今は食いな」


「そうだね。 竜を狩れば、普通の生き物の狩りもできる。 村に被害が出ないうちになんとかしよう」


 ミー二と少年はマスターに会釈をしてから料理に手を付けた。少年は料理の数に驚きながら、一皿ずつ食べ進めていく。


「あと少年、俺が作った薬は今日から三日の間、寝る前に必ず飲むんだ。 今は元気かもしれんがな、念のためだ」


 マスターは紙で包んだ粉薬を三つ、少年の前に差し出した。少年は口いっぱいに食べ物を詰め込みながらありがとうと言った。






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