第3話 少年-③
ミー二は手を洗い、汚れた衣服を着替えると、バハの調理を変わろうとしたが、任せろというので、マスターと共に少年の治療の準備を始めた。
「ふむ。 目立った傷はないのにどうしてここまで衰弱しているんだ? 普段から栄養のある飯を食っていないって訳でもなさそうだが……」
マスターは眼鏡をかけて、少年の首に触れながら診察をした。
「さっき一瞬だけど、意識は戻っていたんだ。 多分、竜に中を喰われてる」
「まぁ、俺が診る限り、身体には異常はない。 ……お前の言うその竜ってのはどういう奴なんだ?」
「黒い水晶のような見た目で、竜の形ではあったけど、眼とか鼻は真っ黒でどこにあるのか確認できなかった。 ……ただ、全身が真っ黒というわけでもなくて、ところどころ違う色も混ざっているような…… 気がする。 見てはいたんだけど、だんだんと風景と一緒になって見えなくなってくような不思議な感覚があった。 それに、魔法みたいなことをしてた。 自分の世界を使うんじゃなくて、この世界を直接操作しているような術。 あいつの近くで生きているだけで、命が吸われるような…… あいつのまわりに霧のようなものが見えたから、それが力の影響範囲だと思う。その中にいるとずっと体が痺れるような痛みが走る」
「じゃあ、俺は近づけないな。 ……エーレも慧術はお前みたいに完璧じゃない筈だ。 ……そこらへんはお前に任せる。 ……んまぁ、また変なもんに捕まっちまったな。 いつもの事だが」
マスターは眼鏡を外して、ミー二を見て息を吐きながらそうつぶやいた。
「とりあえず、俺は薬を今から調合する。 お前は中を治してやってくれ」
「わかった。 とりあえず綻んだ場所を修復すれば意識は戻ると思う。 この感じなら、一晩でなんとかいける」
「そうだな。とりあえずそれでこの子は大丈夫だろう。 後は俺たちの問題と、この子が住んでいるであろう街か村の問題だ。 竜はどうする?」
「狩る。 でも、今のままじゃ火力が足りないし、準備をするにしても、家がこのままじゃね。 この子に話を聞いて、それから考えよう」
ミー二は傷ついた少年の心の世界を秘術で修復するために、左手を動かして、水色の泡を作り出す。作り出した泡を少年の胸に落とし込み、少年の世界の輪郭を捉えていく。傷つき爛れた場所を見つけるとミー二は泡で繋いで埋め合わせて、修復していく。
「ミー二。 あまり無理をしすぎるなよ。 あくまで俺たちは仕事だ。割りに合わない行動は無しだ。 自分の命の使い方…… 忘れるなよ」
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