第3話 少年-①

 日が傾き始める。ミー二は息を上げながら来た道を走って戻っていく。


 少年は背中に乗せて、足を持ち上げ、魔術の糸で固定した。竜との戦闘でミー二は怪我を大きな怪我を負うことはなかったが、緊迫した状況で体力を使いすぎていた。


 だが、少年をできる限り早く治療するために、血の匂いが混じる息を呑み込み、限界を忘れて街道の上を走り去っていく。


(あの竜は追いかけてこなかった…… 断層の上が縄張り、あいつの領域。 トポロの群れがうちに突っ込んできたのはあいつから逃げていたのか。 竜の階級社会は怖いな……)


 街道を走って進んでいく中、石畳の間に躓いて、倒れそうになるのを何とかこらえた。あと少しの距離だとミー二は自身の体に言い聞かせて、ぐっと力を込めて立ち上がる。その時、背中の少年が呻き声をあげた。


「……っあ、……っと」

「大丈夫、もう少しで、私の家に着く。 そこでしっかり寝て、ご飯を食べよう」


 ミー二は少年が意識を一瞬取り戻したことにほっとした。少年にもまた大きな傷やけがはなかったが、ずっと眠ったままだった。少年の肌に触れて、体温を確かめようとしたが、戦闘直後のミー二の左手は体温を測るのに役に立たなかった。


(何とか助けることができた…… この子の親や他に人は居るのだろうか? ……竜がいた場所は瓦礫が散乱していたけど、村っていうほどの大きさではなかった。 とにかく、痕が残るような怪我がなくてよかった)


 ミー二は汗を振り払って、一息つくとまた走りだした。


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