第2話 竜-②

 街道は緑の平野を抜けて森の中へと続いてた。

 森の木々はかなり太く、大きな楕円形の葉っぱが日差しを遮ってくれるので、ミー二は快適に進むことができた。


(この木なら、店を直すのに十分使えるかも。 後でバハに相談するか)


 植生自体はそこまで珍しいものではないが、酒場の修繕に使えそうな素材は十分に確保できそうだった。

 ただ、一向に人の気配は無く、ましてや周りに生き物が一匹も見つからないことに疑問を持ちながら、少し早歩きで進んでいくと、大きく地層がずれて、壁になっている場所に出た。


 ミー二はその断層を確認するために見上げるが、ちょうど太陽の日差しが重なって見えなかった。断層に近づいて影の中に入ると、もう一度、観察するために見上げた。


(ずいぶんと綺麗に分かれているな。 最近があったのかな? 珍しい、は初めて見た)


 ミー二は手で断層をなぞりながら周りを見ていく。少し迂回をすればいいかと考えたが、見渡せる範囲はすべて断層の影響で前に進めそうになかった。


「上に石畳は見えているし多分道は続いている。 登るしかないか」


 ミー二は左手で腰に付けたポーチから弾丸を取り出した。弾丸に魔術で刻印を打つと同時に、右手を下に振り、力を入れると仕掛けを作動させた。

 手首部分にある弾丸を装填するスペースが展開すると、魔術刻印の弾丸を詰めて、仕掛けを閉じた。


 ミー二は森の切れ間まで後退すると、手袋を外し、口で咥えながら右腕を前に伸ばして構えた。

 左手と顔で右腕を安定させると、壁の上部分に狙いをつけた。右手の指は尖らせて貫通できるようにする。そして、弾丸に打った刻印を燃焼させて、弾丸を爆発させる。

 次の瞬間、甲高い音と共に右手が撃ちだされ、狙い通りに壁に右手が突き刺さった。


 離れた右手と右腕は魔術の糸でつながっており、力を込めれば手を動かすことは可能であった。

 ミー二は地面に喰い込んだ右手が外れないか数、引っ張って確認をすると、魔術の糸を巻き取るように引き寄せて大きく飛び上がった。


 肩に多少の負担がかかったが、壁を大きく超える跳躍に成功し、ミー二は壁の上に着地をすると右手について土を払い、口に咥えた手袋をはめなおした。

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