EP.12「望んだ再戦 VS安藤悠人①」
悠人くんと戦うのは約8年ぶりとなる今日、まさかもう一度こうして目の前に現れることになるとは思わなかった。
当時は価値観や種族間の因縁、そしてあの5人の老害によって対立をしていたが今では世界の3大国の代表として人類と同盟を結び共に世界の平和と発展のために技術などを惜しみなく提供してくれる本当に優しい人物だ。おれも悠人くんには何度もピンチを救ってくれた人物だからこそ、もう一度戦ってみたいと心から思っていた。
「ふふふ、あははは!」
嬉しさのあまり、おれは思わず笑ってしまった。
「何がおかしい?」
「いや、こうしてもう一度戦える日が来るなんて思わなかったからついねw」
「さっきも言ったが僕はお前のことなんて知らない。全く、とんだイカれた人間に出会ったもんだ。」
「やっぱ覚えてないよね...」
一瞬でも期待をしていたおれがバカだったが、このひと時の再会をもっと派手に演出したいと考えてあるものを用意していた。
「じゃ、最高司令官や。このマナの雫はおれ様が奪ってくぜ!」
そう言ったおれはポケットに入れていた煙玉を叩きつけた。煙玉からは無害、いや臭い意外は体に無害な煙を放つ。昨日使ったシュールストレミングを粉末にしてさらに沸騰させたお湯でダシをとり蒸発させて気化させたものだ。それをもう一度回収して煙玉として使うというもの。
「ぐっ!なんだこの匂い!?」
真面目で堅物の悠人くんにはこたえるだろうねこの匂いは。簡易的なガスマスクを持っていて正解だった。それを装着して窓を破り外に脱出した。そして急いでバイクの元まで戻り施設をあとにする。
15分くらいバイクを走らせて平和の噴水広場まで来てバイクを止める。さすがに悠斗くんと戦う以上は人が周りにいたら道端を歩く時にアリを踏んでしまうくらいあっけなく死なせてしまうからだ。バイクを降りた瞬間に悠斗くんも上空から舞い降りてきた。
「お前のようなやつをみすみす逃すと思うか?」
「いや、来ると思ってたよ。あくまで場所を移動しただけだからね。」
「なるほど、周りを巻き込まないためか。悪党のくせに変な気を使うとは。」
「さぁ、第二ラウンドを始めようか!」
おれは再び剣を出して魔力を込める。悠斗くんが相手なら多少力を解放しても対応してくれるから。一度戦ってるからわかるものだ。
「いいだろう、ここで血を流させるわけにはいかないからな。氷の棺の中で永遠に眠らせてやる。」
悠斗くんも再び刀を抜き、氷の魔力を込めていく。穏やかに吹いていた風が徐々に冷たく強くなっていく。そして頬に風が当たるたびにまるで氷を直接当ててるかのように感じる。
「いくぞ。」
悠斗くんはそう言うと同時におれの懐までやってきた。まずは刀を切り下ろす。おれは胴体を後ろへと流してかわしていくが切り下ろした刀から氷の刃が飛び出しそれらが再び切り落とされる。おれはそのままの勢いでバク転をして氷の刃もかわしていく。
悠斗くんはすぐに追撃にと次々に刀で突いたり切り上げたりなどを高速で行っていく。もちろんかわしていくが、一瞬の隙でも作れば足を凍結されたりする危険もあるから油断もできない。
「砕氷・三角錐撃」
刀の先に無数の氷を作り、つらら上にしていく。その数、なんと数万。それらを次々に刀で弾いて飛ばす技だ。
態勢を崩す牽制としても相手の行動を制限する妨害としても使用されるからより隙がない技だ。
「やっぱこの技はあなどれねぇな!」
次々と飛ばしてくるつららを剣で弾いたり糸でかわしたりしていく。地面にあたったつららは即座に地面を凍結させて結晶化させた氷の刃を形成する。
隙がないっていった最後の理由がこれだ。つららと刀、そして地面に作られた結晶によって三方向からの立体的な攻撃によって身動きを完全にコントロールされてしまう。もちろん放つ場所も悠斗くんは初めから計算している。
「けどその技は8年前に見てるんでね!」
そう、かつて受けた技はしっかりと記憶している。8年前はもろに食らった技もさすがに対策は立てている。この技を回避するために作った技を放つことにする。
「アンダークェイクション!」
辺りに磁力を込めた粒子をばら撒く、糸は磁力で引っ張るような形でくっつけてそれを引っ張ったりして回避をしていく。この技はその磁力を利用して糸を引っ張りあっていく。
「なにをばら撒いたんだか知らないけど、そんなもので僕の技を封じれると思ったか!」
もう一度悠斗くんは刀からつららを放ち追撃をしてきたがもう通用しないさ。おれは仕掛けを発動する。その瞬間結晶はおれに向かって飛んでくる。そしてあるものを逆に向けたことで結晶は反発して周りに再び刺さり、そしてつららを弾いた。
「どういうことだ?どうして」
「答えは簡単、磁力の流れだよ。簡単な磁石を使って引き寄せたんだよ。」
「そんなバカな、氷には磁力は帯びていない。ハッタリを言うな。」
「だからばら撒いたんだよ、磁力を含んだ砂を。それをこの簡易的に方位磁石で回転させて引き寄せたり寸前で止めたりしてたんだよ。」
簡単に説明をして反撃の一撃を加えようと左側から衝撃を与えていく。次々と切りかかり、悠人くんに攻撃をさせないようにする。じゃないと斬鉄刀を一撃でも食らえば即死してしまう。
悠人くんはエイリーン族が持つ身体能力を使って回避はしていくものの攻撃ができないジレンマがよりイライラを募らせている。
「ちっ、キリがない。なら食らえ。
斬鉄刀 雪崩!」
再び斬鉄刀の技を繰り出してきた悠人くん。さすがに何度も見ている技になるため、回避したりするのも楽。ただ悠斗くんがそんな単純なことをするような人じゃないのは知っているからこそ警戒を続ける必要はある。
「そう避けると思っていた!
斬鉄刀 氷河!」
悠人くんは刀を回し、結露を凍結させていった。そして一回転しながら刀を振ると辺り一面が凍結していき、着地したときに足を氷漬けされてしまった。
「え、ヤバ!」
すぐに逃げ出そうと氷を砕いていくが同時に砕けた氷と凍結していく地面の温度差、そして結露によって瞬く間に再び足が凍っていく。そして少しずつ魔力を込めていく悠人くん。
「ピースフルコフィン」
足元から腰、腹、胸、肩まで次々と凍らされついに全身を氷漬けにされてしまった。
「内側から壊そうと思っても無駄だ。
この氷は徐々にお前の中枢神経に働きかけて、眠りを誘惑する。言っはずだ、氷の棺の中で永遠に眠れと。
短い戦いだったが、どうか安らかに眠るように死ぬんだな。」
悠人くんはおれに背を向けて歩き出した。
力を込めて脱出しようとするがなかなか壊れない。むしろなんだかヒンヤリしていて気持ちいい...
頭がボーッと...してきて眠くなってくる...
ーーーーーー
「信道瑞希、あなたは時間の逆行と変更をした大罪人。クロノの力を利用するなんて...」
なんだか夢を見ているようだ。それとも走馬灯なのか、これはみんなから忘れられる直前の出来事、おれにとっても賭けではあったけれどおかげで悠人くんをはじめ大切な人たちは今でも生きている。目の前にいるのは駄女神、1番最初にあった頃の話。
「あるいは世界があなたに関してをわすれれば万事解決なんじゃない?」
「どういう意味だよ?」
「忘れたわけじゃなさそうだけど、あなたは本来の歴史では存在しない人間なの。あなたが生まれたことによって本来の歴史とは大分違う未来になってしまっているの。
クロノがあなたを使う理由を私にはわからない。ただこのままいけばあなたは自分の世界を、大切な人のためのくだらない考えで滅ぼすことになるわ。だから...」
あいつが差し出したのは白いスイッチだ。
「それを押せば私の魔力によってあなたは世界中から忘れられるわ。そうすれば時空に歪みを発生させることなく大切な人たちを蘇るわ。
ただ、わかっているとは思うけどあなたは大罪を犯すことになった身よ。一生1人で生きていくことになるわ、新しく絆を育もうとしても関係値はリセットされる、でも本来ならあなたの存在そのものが消されないだけでも幸運よ。」
こうすることでしか大切な人を幸せにできなかった、せめておれのことを忘れて幸せに生きていくことができるならと。
「わかった、すまないな。」
おれはあの日スイッチを押して世界を救うと同時に1人になった。今でもあの日にしたことは間違ってないと断言できる。
だからこそ、このひとときだけは何としてでも楽しみたいと心から思っている。
to be cotinued
シニガミと呼ばれる男 希塔司 @abclovers0104
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