EP.3 「全てを一つに」

「液体人間だと、そんなのが許されると思ってんのか。」



「許されようとは思ってないし誰の許可もいらないさ。全ておれの計画通りになればそれでいいのさ。」




全く、こんなイかれた野郎。さっさと終わらせなきゃマジでやりかねないぞ。




全てを一つの存在にする。

それは「個」というものを捨て皆が同じ思想、考えのもとに一つの生命体として生まれ変わろうというもの。


言い換えれば自分の意思や感情が無くなる完全な虚無の存在になること。そこに自由も希望もない。




「確かにそれで戦いがなくなったらそりゃ理想的さ。

けどな、違った価値観、違った意見があるから人類はここまで進化してきたって言っていいんじゃねぇのか?

それにお前は致命的な勘違いをしてるぜ。



そんなことしなくても、人はいつだって一つになれんだよ」





おれの率直な意見を相手にぶつける。



「愚かなやつだ。ならそのご都合主義を跡形もなく溶かしてやる。」




再び臨戦体制に入る。

ここでついに相手も本腰をいれて戦うそうだ。



「受けろ、逃れられない自然の摂理だ。

アシッドレイン。」





そう言うとさっき振り撒いたガスでできた雨雲から雨が降ってきた。

この匂い、酸だ。



これはまずいな、雨に含んだ強力な酸で辺り一面を全て溶かす気だ。




これに対抗するにはアイテムが必要だ。

実は幸いいま手元にデバイスがある。あいつに任せれば大丈夫だろう!




「ok.『HEART』、辺り一面に石灰水の霧吹きを振り撒くんだ。」




「かしこまりました。石灰を含めた霧吹きでしたらこの雨の酸性濃度を極度に弱められます。それでは衛生にリンクし、霧吹きを撒いていきます。」





そう伝えるとさっそく衛生にリンクされ、霧吹きが振りまかれる。

すると酸性の雨はたちまち科学反応を起こし、中和されていく。まるで激辛のものを食べたときに牛乳やクリーム系のもので口の中を落ち着かせるように。



「チッ、この攻撃も防がれたか。しぶといやつめ」



煽りながら回避するから相手がだんだんとイライラしているのが伝わってくる。

え、まさか今のが奥の手というわけじゃないよな?



「お前がここまでの存在だったとはおれにとっては計算違いだった。だが本気にさせてまさか逃げるというわけじゃないよな?」




あ、まだ一応本気じゃなかった感じなのね。



まぁおれもなんだけどね。




そうして霧谷が放ったもの。

それは爆弾だ。ただの爆弾ではなく酸で発生したガスに反応して爆発するものみたいだ。

それもガスによってさらに火力は倍増して。




「さすがに今度こそ終わりだ。この爆弾の範囲は、この街全体に広めた!いくら避けるのが上手いお前でもたった数秒で逃げ切れるものか!!」




「そんなことしたらお前もただじゃすまねぇぞ!」




「おれは爆発には巻き込まれない。おれが張っているバリアの前に自分の攻撃で死にはしないさ。」



当たり一面に再びガスが充満し始める。

さすがに今度は避けるだけじゃまずい、なんとかしてあいつの懐にまでたどり着く必要がある。だがあいつは今バリアを張っている。あのバリアをなんとかしなきゃいけねぇ。



ん、あれは...





「そーら、これで終わりだ!

sad crisis、起爆!!」

そう言いながら霧谷は指を鳴らして起爆の合図を打った。



       ーーーーーーーーー



.........



起爆しない。




「おかしい、なぜ起爆しない。」



あたりには依然としてガスが充満している。

爆弾は確かにまだそこに置いている。それに関わらず起爆しない。




「残念だな、まもなくガスは晴れるし爆弾はただの不発弾になったよ。」



「なんだと、どういうことだ?」

動揺をしている霧谷におれは一つずつ説明していくことにする。



「この街のあのタワーには風力発電のタービンがある。そいつをおれのAIデバイスで操作したのさ。

ガスを吸い込み、それを電力に変えている。



あと爆弾に関してはこれ、ただの小型のインパクト。

これくらい小さな爆弾ならそれも可能だ。


そこの工事現場に置いてあるインパクトをビットを変えて信管を抜けば酸を混ぜた爆弾は不発弾になる。



もちろんこんな危ないものはとっととこの戦いを終わらせて処理するまでさ。こんなこともわかんないのか。

案外科学者ってバカなんだな笑」


ガスは徐々にタービンに吸い込まれていき電気に変わっていく。そしてガスは吸い込まれて消えていった。



「なるほどな、してやられたよ。









と思っているのか?笑」





ズドーン!

ドゴゴーン!!




その瞬間、一斉に爆発をした。

そう、この爆弾はあくまでハッタリを利用した心理テクニックだった。



ガスを充満させ、街全体を囮に取る作戦だったのだ。

だがそれは初めからおれを確実に爆発に巻き込ませるためにあえてわかりやすい仕掛けにすることでその隙をついて一斉に爆発させていく算段だろう。





「バカはお前の方だ!こんなにあっさりと引っかかりやがって笑

ガスがなきゃ起爆できないとは一言も言ってないんだぜ、あくまで爆弾は時限式に決まってるだろ?

さぁて、あいつは溶けたかな?」




        ーーーーーーーーー



煙が晴れるとそこには溶け続けているコートが置いてあった。


「はっはっはっは!ついに溶けやがった!おれをイライラさせるからだ!


いくらお前が戦いを何度も経験していようと酸の前では無力だ。酸は全てを一つにしてくれるありがたいものなんだよ。


そんなことしなくても一つになれるって戯言言ってたもんな、どうだ?お前も溶けて1人の液体人間になれる感想は!」


霧谷は置いてあるコートに向かって叫んでいた。完全に調子に乗っている霧谷にお灸の一撃を。





「オーバーソードレイ!!」






宙に舞い、上空から魔力を込めた剣撃を衝撃波のように飛ばす技。

それを持ってようやく霧谷にダメージが入る。ズバッと背中に一撃を食らった。





「なんだと、おれが、おれが傷を負うだと!」



「残念だったな。言ったはずだぜ。

お前は今まで戦ってきた敵の足元にも及ばないってな!


さぁて、こっから反撃開始だ!」


そうして再度魔力を剣に込めておれは構える。こいつとの遊びもそろそろ終わりだ!



 



to be cotinued

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