EP.4 「雨が止み」

おれは意気揚々と霧谷に向けて反撃を開始する。

霧谷は自分の周りにゼリー状のバリアを展開する、もちろん性質は酸だから触れるだけで鉄や鋼などが溶けてしまう。



だがおれの武器はかつてオーダーメイドで作ってもらったもの。

そう簡単に刃こぼれなんてしない。




徐々にバリアを切り刻んでいく。

だがしまった。ジャケットにゼリーがついてしまった、すぐに脱ぎ捨てて酸から回避していく。






「その剣、まさかオリハルコン製か!?」




「そうさ、オリハルコンをふんだんに使用した剣だ。おれの長年の相棒さ。」







オリハルコンはこの世界における伝説の鉱石、かつて宇宙から隕石として飛来してきた。


太古の昔より採掘されたことで今はブラックオークションで100グラム数千億の値がつくほどの超高級品。




だが性能は折り紙つきで、魔力をこめても刃が砕けることはない。重さは鋼の1/3。

様々な武器に応用できる製造しやすさ。



粉末状にして衣服に付着させれば魔法の威力を1/5にカットしてくれるしダイヤモンドの4倍の硬度、そして火、水、風、雷、土の基本属性はもちろん、今のように酸を浴びても溶けない。





「なるほどな、通りでその剣を振り回すのは軽いだろう。

ならこれはどうだ!」




霧谷は魔力で酸の形状を変えて槍の形にする。


数百本はあるかと思うくらいたくさん上空に浮かべていた。




「しまったな、この数じゃ多少くらっちゃいそうだ。」




「同じ濃度の酸だ、被弾すれば体は跡形もなく溶けていくぜ。



ドントエスケープ!!」




数百本の酸の槍が一気にゲリラ豪雨のように降り注ぐ。


おれは糸を利用して回避をしていく。

だが最後の一本だけはなんと魔力で操られた誘導弾だった。




おれの左腕にぶっ刺さり、少しずつ溶かしされていく。

左腕を一旦切り離し、重曹をかけていく。

少し経つと中和されてガスも収まっていった。




「ついに被弾したな、これから四肢を少しずつ溶かしていってやる。

つぎは反対の腕かな?」





あまり長時間は戦えないか。

一気にケリをつける。油断している今がチャンスだ。






「さぁもう一度食らえ。


ドントエスケープ!!」






霧谷はもう一度数百本の槍を作り放とうとしている。

あいつも次で終わらせようとしているようだ。




おれも魔力剣として力をこめる。

もう一度あの技を放つために。





そして上空へ回避しながら飛び、霧谷の真上まで昇り





「オーバーソードレイ!」




「く、くそがぁー!!」



霧谷は再びバリアを張ろうとするがもう遅い。斬撃をたくさんくらい地面に叩きつけられる。






地上に降り立ち、霧谷を確認する。

まだ息はあるがもう戦える状態にはない。






「ぐっ...がは...」



血を吐きながら項垂れている。

オリハルコン製の剣を使っていなければきっと倒れてたのはおれの方だった。





切り落とした左腕を切断部にくっつけタオルで巻いて、薬を幹部に打つ。

絡庵で製造された薬でエイリーン族の細胞を使用している。



エイリーン族は自己治癒ができる一族で腕が切り落とされていてもタオルなどで巻いておけば1日で結合できる。

この薬はさすがに純血ほどの治癒は難しいが3日ほどでしっかりとくっつけられる。





「おれの負けだ、さぁ早く殺せよ。」




「残念だが殺さないことにしたよ。

お前を殺したところで溶かした人たちは帰ってこない。


研究所の実験台として一生を終えるんだな。」


「ふざけるな、あんな頭の固いやつらに利用されるだと...

ふざけるなぁ!!おれはただ自分の理論を用いて世界を救うために!」


「それが1人の液体人間にするってことかよ、悲しいやつだな。」


おれは霧谷から離れていく。

霧谷騒ぎを聞きつけた世界政府のエージェントに連れて行かれた。


ただ殺して終わりだとそれは償いにはならない。その人間にとって1番の苦しみを味わうことが自分のしてしまったことの罰になるのだから。




こうしておれの休日を見事に潰した事件。

後に『マッドサイエンティストの実験日』と呼ばれる戦いは幕を閉じた。







     ーーーーーーー


疲れて眠っていると夢を見た。

夢というか意識がある場所に飛んで行ったというか。




「瑞希、聞こえる?」



この声は、忘れもしない。





「おや、誰かと思ったら駄女神さんじゃありませんかw」



「いっつもあんたはふざけてるよね?」





神々しいオーラとかもなく、ただの私服姿で現れたのは運命の女神、ルーシェ。




おれが世界中から忘れられることになったきっかけになった女神。

そのくせ肝心な時にドジったりするような立ち振る舞いだから駄女神って呼ぶようになった。



どうやら彼女はおれがいる世界以外にもいろんな世界に干渉している。

なんでそんなことしてるんだか知らんけど。





「それで、なんか用なの?」



「実はあなたに相談したいことがあるの。」



「神様が人間に相談事って相変わらず切迫つまってるんだなw

つーかその姿じゃだれも神様って気づかないだろ。」




「相変わらず性格悪いねあんた!

まぁいいわ、それで相談事は...



別の世界のことなんだけど、どうやらその人は復讐に命をかけてるの。全てを奪われて...



その世界は帝国が国を治めていて繁栄のためにたくさんの人が犠牲になっていったの。




このままの結末だと、彼女はきっと帝国に負けてしまう。

彼女はいずれ大きな仕事をする気がするの。

なんとかならないかな?」


他の世界のこと相談されたってなー




「いや知らねぇよ」



「え?」




「その答えは自分で見つけるしかねぇだろ結局。

過去の清算をするのか、今の仲間との生活を取るのか。



いくら神が提案したって、納得しなきゃ意味ねぇだろ?」




「そう...




そうよね、確かにあなたの言うとおりかもしれない。」




「え、今のが答えになんの?」



「そうね、過去か今か。


彼女に選択を促してみるよ。ありがとね。」




「それなら何よりよー

そういやお前も度々おれのいる世界に来るよな。」




「あんたがいる世界が1番面倒かかるからよ。

他の世界は何かしらアドバイスすれば解決に導けるのに


特異点のあんたがいるせいでこの世界はめちゃくちゃになってんだから!」



やれやれ、また説教かよ。




「それに、破滅神がしつこく刺客を送ってるのもあるわ。


この世界の英雄たちが倒して来てるから完全に目をつけられちゃってるかもしれないの。」




「だろうね、何度も使者が送られてきてるからな。

実際それで一度世界は崩壊しかけてる。


いずれはその破滅神ってやつをやっつけねぇとな。」




「あなたならそう言うと思った。

じゃ私は向こうの世界に行くから、あんま無茶しちゃダメだからね。」





そう言って駄女神はポータルを開いて行ってしまった。





全く、人の睡眠を邪魔しやがって...

シニガミとしてもう10年近く戦ってるから体にガタ来てんだよ、せめて寝かせてくれよ。






to be continued

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