幕間1

 小型のワイバーンがとある洞窟の最奥にある玉座の間で、頭を深く下げる。


「取り急ぎのご報告が。」


「…申してみよ。」


 玉座の間は真っ暗で、部下の魔族たちでさえも主人の姿をはっきりと見たことは一度もない。ただ、そのシルエットは人のような形をしていた。それがまた部下の魔族たちにとっては不気味で、主人への畏れを強めていたのだった。


「何者かがフォルテンに侵入しました。ドレイクがやられたようです。」


「…目的は何だ。」


 声に怒気が籠ると同時に影が巨大化していき、竜の形になる。すさまじい魔力が放たれ、空間を揺らす。ワイバーンは身体を震わせながらも、報告を全うすべく声を絞り出す。


「それが特に何もせず去っていったようで調査中でございます。」


「フォルテンはアルトゥムに近かったな。アバドを倒した者とまさか関係があるのか…」


「その件に関しても未だ詳細が分からず…どうやらアバド様は話す気がないようでして…」


「アバドには私が直接話を聞くとしよう。フォルテンは…口惜しいが破壊しろ。私も、腹をくくる時が来たようだ。」

 

「腹をくくる?それは一体…」


、魔族の王になるのだ。このニルファスがな。」

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