10 アイアンゴーレム
初回特典の宝箱を前に、のどがゴクリとなってしまう。
そしてイサックさんがゆっくりとその箱を開けると、それなりに良さそうな剣と弓、それと若干の宝石類が入っていた。
残念ながら使える人はいないようだ。弓は僕も使ってみようかなって思ったけどやっぱり僕には無理みたいで諦めた。
結局それを売って今回の討伐した魔物の素材を買い取ってもらうと、かなりの金額となった。ここはひとつ装備を高めて20階より上を目指そう!みんなで目を輝かせて話し合った。
今回は装備を重点的に買ってみた。
本来重くなるから使わないであろう胸のプレートを厚くする補助装備や、手足を保護するプレートも購入した。
なんとあの
もちろん其れなりに重さのある装備であったが、僕の『軽量化』の前には絹を纏ったような軽さとなった。
そんな新装備で防御を固めた僕たちは、さらに快進撃を続けた。
そして遂に30階層までかたどり着く頃には、僕も『射撃』スキルも得ることができた。そのせいか命中率は格段に向上し、たぶんだけど目くらまし程度には貢献していると思う。
――――――
『射撃』命中率が上昇する
――――――
どの魔物も僕が止めを刺しているわけでは無いから、相変わらず僕のレベルは上がらないけどね。
そして緊張しながらも、遂に30階層のボス部屋へと入る。
僕たちの前には、魔方陣から出現したアイアンゴーレムという大きな鉄のような見た目のゴーレムが3体。拳をガシガシぶつけ、やる気満々な様子を見せていた。
すぐさま僕は何時ものように壁際まで下がる。ケイトさんはその横に待機し、すぐにいつもの付与を施し始めた。
ブルゴーニさんがゴーレムを3体とも引き付ける。そしてイサックさんが格段に攻撃力の上がった大剣を振り回し、ゴーレムを横から叩きつける。いつもの攻撃パターンだ。
だがその大剣がガキンと弾かれてしまう。
ブルゴーニさんもゴーレムの攻撃を抑え得るのに必死の様だった。僕もパチンコで視界阻害の玉を当てているがあまり効果は感じられない。
ケイトさんからは火炎魔法用の杖を出すと『大炎』という最大火力の攻撃をぶつける。
その攻撃を受けた1体のゴーレムが少し体制を崩すが、ケイトさんであってもその攻撃を連射できる訳では無い。
「イテイオくん。これ」
僕はケイトさんから帰還用の魔道具を手渡される。
2人で手前のゴーレムをなんとか弾き飛ばしたイサックさん、ブルゴーニさんもこちらへ走ってくると同じ様に魔道具を受け取り、さっそく使用していた。僕も慌ててそれを握り締めた。
「固すぎだねあれは無理だわ」
「そうだな。あれはまだ無理だ」
「暫くレベル上げと金策だな」
3人の言葉に僕もうなづく。
こうして、初めての敗北を体験した僕は、30階層の手前で素材集めをしたり、依頼で割の良いものを見つけてはそれをこなしていった。
そんな生活を続ける事1ヵ月。
僕たちはまたあの武器屋、ではなく、少し先の古ぼけた屋敷に入っていった。
「ここは?」
「ああ、ここはオーダーで武具を作るドワーフたちが集まる工房さ」
僕はブルゴーニさんのドワーフと言うワードに興奮した。
異世界あるあるな鍛冶と言えばドワーフなあのドワーフである。
屋敷に入り出迎えてくれたのは、イメージ通りの髭の長いがっちり体系のドワーフさんだった。
結局、大剣と大盾を王都で購入できる中でも最高の素材で作ってもらった。
作成してくれたドワーフの工房でも「こんなに大きいのなんて使えるのか?」と何度も確認されたけど、僕のスキルがあるから「大丈夫です!」と言って作ってもらった。
ついでにケイトさん用も見た目重視だが、頑丈なフルプレートアーマーも作ってもらった。
比較的加工が容易で固いが、重さがネックになって装備には使われない金剛重石という素材を使ったシャープな鎧。
薄く1センチぐらいの板に加工して、その両淵は誤ってケガをしないように丸みを付けてもらうよう伝える。表面からは細いワイヤーのような見えるようにして体を這わせるように覆ってゆくものだ。
ブラインド―や換気扇などを開いた形と言ったら良いのか?ドワーフの親方にそのイラストを少し書いてみたらものすごく乗り気で食いついていた。結局その日は僕だけが泊まり込みでその話に付き合い、完成が楽しみなデザインに仕上げられた。
久しぶりにオタクトークのようなものができ、興奮のまま初めて徹夜してしまった。
完成までは1週間ちょっとかかると言うので、僕も全財産を吐き出したものの、宿はすでに半月程度は期間が残っているので大丈夫だろうとダラダラした日々を過ごしていた。
そして1週間、同じ宿に居るはずなのに中々会わなかった3人と、食堂で一緒に朝食を取る。
「久しぶりだな。元気にしてたか?」
「ダラダラ過ごしてたらあっという間に1週間以上たっちゃいました。イサックさんたちは?あまり会わなかったですけど」
「ああ、俺たちは身体がなまらないように少し遠出して、簡単な依頼をいくつか受けてたんだ」
「言ってくれたら僕も一緒に行ったのに…」
僕のクレームに軽く笑うイサックさん。
「まあいいじゃねーか。イテイオはまだ子供だ。少しダラダラするのも良いもんだろ?」
「そうですね。それなりにリフレッシュできました」
「それで良いんだよ。じゃあ、武器を取りに行くか」
「はい!」
そう言ってすでに食べ終えた食器を返却口へとかたずけると、食堂を出てあの屋敷へと歩いて行った。
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