07 オークの群れ

オークの群れと遭遇し、ケイトさんに後ろ抱きにされドキドキしている僕。

そんなことを感じている間に、今までとは少し違いイサックさん僕たちのところまで下がっている。


そしてオークが容赦なくなだれ込んでくる。

群れの半分、5体のオークが襲い掛かってきた時、ブルゴーニさんがスキルを使ったのか一瞬光を帯びる。それに反応するように一斉にブルゴーニさんへと標的を変え攻撃を仕掛けてきた。

それをブルゴーニさんが盾を微調整して捌いている。


ケイトさんが腰に幾つか提げている袋から、青い小瓶を取り出しブルゴーニさんに投げつけた。瓶が割れ中からは青い液がブルゴーニさんに掛かる。

イサックさんはそのまま待機していたが、同じようにケイトさんから瓶を投げつけられ緑の液を浴びる。そして「うおー!」と掛け声を上げてオークたちをザクザク切り殺していった。

ケイトさんは別の袋から杖を一本出すと、身構えた後に杖先から石のつぶてがいくつも飛んで、後方にいたオークたちに飛来していた。


そして気づけばオークたちは全て狩り終わっていた。


「よし!ちょっと過剰戦力すぎたが、だいたい何時もはこんな感じの連携でやってる。どうだ、イテイオはこんな感じの中、後方で邪魔にならないように見ていれば良い」

「どこまでできるか分からないですが、怖いとかそう言うのはなかったですし、ぜひ仲間に入れてください!」

俺の返事を聞いて満足そうにニンマリするイサックさん。


「じゃあ今日はこの辺にするか!」

そう言ってから僕を呼ぶイサックさん。いよいよ倒した10体ほどのオークの解体を始めるようだ。


ケイトさんは魔力回復のために座って休むというので、僕はイサックさんとブルゴーニさんに解体も教えてもらうため、2人の元へと歩いて行った。


丁寧にオークの解体方法を教えてくれる2人。

買ったばかりの短剣で意気揚々と解体に励んでいた。


思ったより簡単にできそうな感じではあったが、かなりの重労働だ。僕はレベルも上がっていないから能力値も低い。だから全身汗びっしょりになりながらも、3人で30分程度、計10体の解体を終わらせた。


そして綺麗に積んだお肉の山を、落ちないように布にくるんでロープで結ぶ。


「なあ、こんだけ解体してから言うのも何だが、本当に大丈夫なのか?」

「そうだな。普段なら袋に入る分だけ入れて後は放置だから、無理なら良いんだぞ?」


「実は、まだスキル使ったこと無いんです」

イサックさんの当然の疑問に、一度ぐらいは『軽量化』を試しておけばよかったと思ったが、今となってはもう後の祭りである。


これで大した軽量化ができず、持ち運べないのであれば時間の無駄であった。


「まあ、ダメならだめで、いつも通り持てるだけ持って帰ればいいさ」

イサックさんが軽く言ってくれた言葉に、少し緊張が和らぐが、できれば僕だって役に立ちたい。


恐る恐るそのオーク肉の山に手を置き、初めての『軽量化』を発動させる。


一瞬体の中から何かがほわりと抜けた気がしたが、多分これで良いのだと感じてはいる。

そしてそのロープをグイっとひっぱると、オーク肉の山は片手で持ち上がってしまった。


「すげー!すげーよイテイオ!これなら迷宮深部でも大量の素材が出たって持って帰れるぜ!」

驚く僕を他所に盛り上がる3人。


まあ確かにびっくりの結果だ。僕が一番驚いているかもしれない。

これだけの物を持っているがそれほど重さを感じない。ボーリングの玉ぐらいかな?そんなことを思いながら、ロープを肩にかけるようにして背中に背負ってみた。


「なんだか、凄い見た目だね」

ケイトさんが少し引いているように思える。


「ギャップが凄いな」

「だな」

イサックさんとブルゴーニさんも同じように引いている。


実は僕も引いている。僕の背中にはあの山のようなオーク肉が背負われているのだ。

思わず「ぷっ」と吹き出すと、3人も同じように吹き出してしまった。


その後、森の中を3人に守られつつ戻る。

途中で何体かオークを倒し、さらに解体したお肉は軽量化してブルゴーニさんが運んでいた。やっぱり当たりのチートスキルでは?と思った。


ギルドに入るとまたみんなにドン引きされていたが、ちらほらと「一緒に組みたい」というような声も聞こえ、少し嬉しくなってしまう。

その後、素材を全て解体所に置くと、今回の討伐で金貨1枚近くになったようで、僕には銀貨2枚が分けられた。


「ごめんね。どうしても私の薬を作るのに、素材買うから銀貨2枚は共有財産に入れる必要があるんだよね」

ケイトさんが気まずそうにそう言ってくる。


「いえいえ。良いんですよ。それより僕は帰る時に少し協力しただけで、戦闘では役立たずでしたから。逆にこんなに貰っていいんでしょうか?」

僕のその言葉を聞いてまた抱き着いて「いいのよいいのよ」と言って頭を撫でてくるケイトさん。


きっと『なんて可愛い子!これはもう食べちゃっても良いのかな?いいよね?だって可愛いんだもん!』と思っているに違いない。

それならそれで僕もやぶさかでも無いし…と思っていたが、残念なことにケイトさんが「ごめんね。明日のために素材買いに行ってくるね。先に2人と食べてて」と行ってしまった。

そんな残念な気持ちを胸に、イサックさんとブルゴーニさんと一緒に、宿屋に戻ると遅い夕食を頂いた。


美味しい料理に大満足して部屋へと戻り、初めての冒険者としての一日を終えたことに心の安心を感じていた。

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