第10話 英雄vs最強
「クロ…大丈夫か?」
返事が無い、
「なぁ、クロ?」
俺は一歩前に出る。
その瞬間眼の前にクロが居た。
全てわかった。
今のクロはクロじゃない、
そして俺は死ぬ直前だと。
クロの手刀が俺の心臓の前にある。
俺は想像してしまった。
それは死んでいる姿だった。
ドガアアンン
「あぁ、おい、嘘だろ?キラァ!」
ぼんやりと聞こえてくる。
周りの逃げ惑う冒険者の声が。
アランとメイリィが叫んでいるのが。
「キラ!!早く起きろ!キラ!!」
それはアランでもなく、メイリィでもない。
聞き覚えがある声。
「カルナ、師匠?」
「あぁ、そうだ俺だ、間に合って良かった。」
「ヤバい魔力を感知して、急いで来て正解だった。」
俺はカルナ師匠に抱えられ仲間の元に運ばれていた。
「だけど、今の状態はかなり最悪だな。」
「あんな魔力、見たことが無い。」
「どす黒くて、憎悪に満ちている。」
「俺があいつの相手をする、お前達は国に戻れ。」
「早めにな。」
そう言うとカルナ師匠はクロに近づく。
「お前は確かクロだな、なぜ仲間を殺そうとした?」
「…………」
「だんまりか、だが、だいたい検討はつくぞ、
お前、入れ替わったな?魔力が全く違う。
強さの話じゃない、人が変わったみたいだ。
本質は同じの別人にな。」
「…………」
「まぁいいか、やるぞ。」
静かな時が流れ…カルナ師匠が唱える。
「
カルナ師匠の周りの空気が揺れはじめ、
空間が歪んで見える。
それに対しクロは前に手を伸ばす。
クロの周りに闇が漂い、手に集まり、形を形成していく。禍々しい戦斧だ。
次の瞬間、力がぶつかり合う、戦いの場を中心に地割れが起き、衝撃波が周りを吹き飛ばす。
もう誰も近づけない、近づいたら最後、死が待っているからだ。
対等に戦っているクロとカルナ師匠に見えたが、カルナ師匠は防戦一方だった。
「くっそ、高出力の魔力をぶつけているのに、なんで当たる瞬間に分散されるんだ!このまま押されたら、キラ達を巻き込んてしまう、クロを遠ざける為に、もっとだ、もっと、出力を上げる!!」
「
凄まじい爆音と共に吹き飛ばされるクロ、だがダメージは入ってるようには見えない。
師匠は畳み掛けるように近づく、が、
クロは指を差す。
「くっ、化け物が!!!」
カルナ師匠は何かに気付いたが、もう避けれない。
クロが唱える。
「
黒い三日月が師匠の腕を断絶した。
その衝撃で、カルナ師匠が吹き飛ばされた。
カルナ師匠の安否は分からない、だが、今は自分達の命を確保するので定一杯だった。
瞬間、クロが俺に近づき、手を伸ばす。
俺は自身が危険な状況よりも、恐怖よりも、クロの為に、俺は叫んだ。
「クロ!!俺達は仲間だ!!信じてる!!」
こんな事は無意味に近いかもしれない。
言葉は届かず、俺はもう、死んでいるかもしれない。
だけど、だけど!、俺はクロを信じる!!
クロの動きが止まった。
次の瞬間、クロは叫ぶ。
こっちも苦しくなるような叫びだ。
「私は…私は!!逃げて、みんな……逃げて!!」
憎悪に満ちた目と声だ。
だけど、クロの優しさが微かに感じる。
そして、クロは戦斧を振り上げる
「やらせねぇ!!」
振り下ろされかけた戦斧を誰かが止めた。
「か、カルナ師匠!」
カルナ師匠は生きていた。
斬り飛ばされたはずの腕も魔力で修復されている。
「俺は英雄だ!こんなことで死んでたまるか!!」
カルナ師匠が俺に言う。
「キラ、聞いただろ!こいつも逃げろって言っている。
速く逃げろ!!信じているんだろ!!」
カルナ師匠の言葉が俺の心を更に動かし、俺は覚悟を決めた。
「……はい!」
「メイリィ、アラン、逃げよう。」
「あぁ、行くぞ!」
「あぁ、わかった!」
俺達は全速力で逃げた、クロを信じて。
カルナ師匠を信じて。
ずっと走った。
ずっとずっと、走り続けた。
山の方からは光が指す。
「ハァハァ、やっと付いた、王国レティアに戻って来た。」
俺は前に、カルナ師匠と特訓をした場所に着いた。
「キラ、これからどうする。」
「待つ。」
「…そうか。」
「あっアラン!キラ!カルナが戻ってきた!」
俺は振り返ると、そこにはボロボロのカルナ師匠が居た。
「カルナ師匠!!」
「おう、今戻ったぞ。」
カルナ師匠は倒れかけ、俺達は駆け寄り支えた。
そして俺達は逃げた後の事をカルナ師匠に聞いた。
どうやら最後にクロは強力な魔法を放とうとした。
カルナ師匠も全力の魔力で相殺しようとした。
その瞬間、日が指し込み、いつものクロに戻ったらしい。
そしてクロは涙を流してつぶやいた。
「もう君の隣を歩けないや、じゃあね、みんな。」
そう言い残すとクロは姿を消した。
これが俺達が逃げた後の事だった。
俺は唇を噛み、拳を力強く握りしめ、皮膚に爪が食い込んで血が流れた。
「キラ…大丈夫か、」
「認めない…認めるわけがないだろ!」
俺は一人で王国の外に出ていこうとした。
「おいキラ、クロがどこに居るのか…分かるのか?」
アランが聞いてきた。
どこに居るか?それは知らない、だけど、俺には、
「分かる!」
大きな声で言う、少しの沈黙が流れる。
するとアランが俺の背中をポンッと押すと、
「そうか、よし行こう。」
それに続きメイリィが俺の頭を少し飛んで叩く。
「だな、クロのやつ、前に私のお菓子を食べた事、まだ謝ってないからな!」
俺は頷き、仲間の思いが一緒だと実感する。
俺は深呼吸し、覚悟を決める!
「あぁそうだな!」
俺達は仲間だから信じたんだ。
クロ、勝手に一人で終わらせない、絶対に!
「俺達が目指すは、俺が最初にクロと会った場所、」
「丘の上の小屋だ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます