第7話 仕事

さて、晴香専属の男性モデルと言ってもピンとこない人が多いだろう。だってこの世にこの職業についてる人は俺しかいないのだから。この職業について話すと長くなるが話そうと思う。



およそ2年前、俺がまだ中学生だったころ、同じ中学生だった一個下の晴香は、現役アイドル兼モデルとしてテレビや雑誌で活躍していた。だんだんと仕事が増えていき、すごいなーとか思いながらゲームしてた俺の元に晴香が泣きながら駆け込んできたのだった。


「お兄ちゃん!助けて〜!」

「、、、えっとなんで?」

「私このままだと変な知らない男の人と雑誌の撮影しなきゃいけんくなっちゃう!」

「うん?」

「だから助けて?」

「なぜに?」


イケメンな男性モデルと撮影できるなんて嬉しいことだと思うんだけど。


「とにかく嫌なの!」

「俺と写真に写るのはいいのに?」

「!」


そう言った途端突然、ひらめいた!みたいな顔をして晴香がこっちに顔を近づけて、こう言ってきた。


「お兄ちゃん!私の専属モデルになって!」


うん、今日も晴香はかわいいな〜。じゃなくて、今こいつなんて言った?専属モデル?俺が?


「流石に無理じゃないかな?多分雑誌作ってる会社の人とか事務所の人が許してくれないでしょ?」

「大丈夫!」

「大丈夫じゃないと思う、さすがに。俺そこまでイケメンじゃないし」

「じゃあ不安なら一回提案だけでもさせてくれない?オッケーもらえたらやってくれればいいから」

「まあ、それなら」





ってなことがあって、なんかこのあとすごい社長さんとかに反対されたらしいんだけど、俺が謝りに会いに行ったら、やっぱ気が変わったとか言ってオッケーになったんだよな。そっからこの謎の仕事が始まったんだよな。ああ、懐かしい。まあ、だから基本的に晴香に男性モデルととらなきゃいけない撮影がある日以外は、俺別に仕事ないから楽でいいんだけどね。なんか一回社長さんに誘われたこともあったけど晴香が猛烈に反対してくれたおかげでこれだけやってればいいし。





「はい、じゃあ今日の撮影は終わりだから」

「「ありがとうございました」」


撮影が終わり、晴香と仲良く今日撮影してくれたスタッフさんたちにお礼を言う。そして、撮影していた建物を出て、しばらくすると、電話がかかってきていた。いっつも、撮影中はマナーモードだから気づかなかった。


「誰だろ?、、、って、ごめん晴香、ちょっと電話してきていい?」

「全然いいよ〜」


そう言ってくれた晴香にお礼を言いつつ、俺は少し離れたところに行き電話を折り返した。


「もしもし」

「あ、もしもし、薫さん、すみません、電話取れなくて」

「全然大丈夫よ、ところで、今電話してきたってことは今から話せるってことでいいわよね?」

「はい大丈夫です」

「分かったわ、でも要件だけ言うわね。詳しいことはまた明日。」


なんだろ、明日打ち合わせあるのにこのタイミングで電話って。


「なんと、あなたの作品がついにドラマ化することになったわ」

「え!本当ですか!?」

「ええ」


やったついにドラマ化デビューだ!アニメ化しかしたことなかったからドラマ化して見て欲しかったんだよね。


「とりあえず急ぎの要件は伝えたから、明日は少し長くなるかもしれないけど覚悟しておいてね」

「わかりました、ではまた明日」



ちなみにこの後晴香の元に戻って一緒に帰るときにニヤニヤしてるって言われたのは言うまでもない。





その翌日、俺は大手出版社の本社に来ていた。


「晴人くんこっちよ」


着くとすぐに、薫さんに呼ばれたため、しっかりついていく。するとついたのはもう何回目かもわからないほど使っている会議室だった。移動中に聞いた話だと、今日はドラマの監督さんとかは来ていないものの、こんな感じにして欲しいとかの要望を伝えれるようにしようみたいな感じのことを言っていた。ちなみに今日は元々は原稿渡して終わりだったから、予定より伸びるのは確実だ。だから今日この後にある仕事の方には遅れるかもしれない旨を伝えておいた。





しばらくして、


「じゃあドラマ化に対する要望としてはこれで出すわね?」

「はい、お願いします」

「じゃあ、今日はもう帰っていいわよこれは送っておくわ」

「ありがとうございます、失礼します」


そう言って、会社を出ると俺は急いでタクシーを呼び、乗って次の仕事場へと移動した。




その仕事場は普通の住宅街の中にあるとある一軒家だ。俺はここで友達2人と一緒にWetubeの撮影をおこなっている。まあ一緒と言っても、出るのは俺1人だけどね。


「よっ」

「久しぶり」

「遅い!」

「いや遅れる連絡してだろ?」

「見てないからされてないのと一緒」

「んな横暴な!」


こんな感じで久々に会った友達と挨拶を交わし、中に入りすぐに撮影の用意をする。まあ、撮影といっても別に顔を出すわけじゃない。俺は歌い手だからね。ちなみに歌ってる曲は全部俺が作詞、作曲していて、サムネとかをさっき遅いとか突っかかってきた結菜が、編集作業諸々をもう1人の美奈にお願いしている。実を言うと最初は、男子でできる人を探していたんだけど、みつかんなかったからこの2人にお願いした。


「はい、ちなみにもうサムネできてるから」

「早すぎじゃない?仕事も突っかかるスピードも早いね」

「うるさい、はやくして」


おっと、きっとこれ以上言うと今日はもう拗ねてしまうため言わないでおく。


「じゃあ始めるよ?」


その言葉に応えるように美奈が丸を指で作って見せてくれる。

よっし、じゃあ今日もいっちょ行きますか!








3時間後。

疲れた。久しぶりにこんなに歌った。


「はい、お疲れ」

「ありがと」

「別に感謝されほどじゃないわよ」


そんな感じで結菜と話していると、


「うん、できた」

「え、早くね?」


この子の場合はマジで早い。まだ作業始めてからたったの5分しか経ってない。


「じゃあもうあげちゃうね?」

「はい、お願いします」


カチッという音と共に公開された俺の歌。今日はどれくらい反響がもらえるかな?


「じゃあ次は来週ね?」

「おう」

「うん分かった、バイバイ」

「じゃあな」


そう言って来週に約束をしてそれぞれ帰路に着いて帰る。そこまで会話もないが俺たちはいい友達だと3人全員が思っている。







家にて。


「「「おかえり〜!」」」

「ただいま」

「「ねえねえ、晴人君これ見て!」」


そう言って、雪音と雪菜が見せてきたのは何やら見覚えのあるサムネだ。って、え?これ俺のじゃん?ちなみに澪は少し離れたとこでくすくす笑ってやがる。でもこの様子を見るにまだ言ってはいないっぽいな。まあ、いっか。これくらいなら言っても。


「晴人君、ニコニコしてどうしたの?」


ここをニヤニヤと言わないあたりやっぱりいい子だと思う。


「実はな、これ歌ってるの俺なんだ」

「「え!?」」


予想通りめっちゃ驚いてくれる2人。


「確かに言われてみれば声が似てるかも?」

「そんな、カッコよくて、運動もできて、歌も歌えるとか超人じゃん」

「私は知ってたよ〜?」


そう自慢げにいう澪を見て、うんお前今どこに自慢げにいえる要素があった?


「「ずるい!わたしたちにも教えてくれればよかったのに!」」

「はは、ごめんごめん」

「「まあ、今行ってくれたから許してあげる」」

「ありがたい」

「「ただ!罰として、今日はとびきりおいしいご飯にしてもらって、あと今日の寝る時の両隣はわたしたちです!」」

「え、順番じゃ私が右側だよ?」

「「だから罰なの!」」


すごい拗ねてんな。まあ、いっか。俺はいつもよりちゃんと時間をかけて美味しいご飯を作りますかね。


雪音と雪菜にひみつを打ち明けることができるようになるような信頼を持っていることにまだ自分では気づけていない。


そんな感じでまた賑やかな夜が始まった。







第7話です!

ちょっといつもより長めです。今回は晴人が隠していたことを公にしていきました!ここからの予定としては、晴人がバスケを辞めた理由についての話を挟んで、終わりに近づいていく予定です!

どうかこれからも読んでくださると嬉しいです!

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