きらきら光る

第2話

きら きら ひかる よぞらの ほしよ


 ぞっとした。その男は幽かな声でそればかり繰り返し口ずさんでいた。


きら きら ひかる よぞらの ほしよ 


 間違ってる。音程が変わってもおんなじ歌詞。


きら きら ひかる よぞらの ほしよ


 わたし以外に気付いているんだろうか?このゾッとするような、か弱くも冷たい歌声に。そして、その錯誤がちいさな子供のそれみたく無邪気なものではなく、おそらく重く冷たい何か、確信みたいなものであるだろう事に。


チンコー チンコー ガイジンサン


チンコー チンコー ガイジンサン


チンコー チンコー ガイジンサン


チンコー チンコー ガイジンサン


チンコー チンコー ガイジンサン   


チンコー チンコー ガイジンサン


 ひとしきり日本語に訳されたものを口ずさんで、それでもまだ歌っていられる時には酷い発音の英語で続ける。戯れ歌みたいにも響く。それでもまだ歌える時はハミング。放っておけば、この3つをずうっと繰り返している。

 

 わたしは不思議と聴いていたくて、気付かれないようにしてる。知らない間に近付き過ぎた時、慌てて誤魔化した。

「お疲れさまです!」

「あ、黒川さんか。びっくりしたなあ」

 彼はそう言っておどけて見せて、つまらない世間話を2、3喋って立ち去った。

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