第6話 王者のプライド見せつけた③

「さぁ、勝負を始めましょうか」


 学校の屋上に上がれば、簡単にバトルを見られるような場所にある公園。

 ライトニングトールが左手を空高く上げ、空を黒く染める。

 上空に轟く雷鳴は、ライトニングトールの呼吸か。

 そして右手は、背中の収納スペースから巨大なハンマーを掴み取る。


「いきなり両手使いか……。

 なら……!」


 右手を前に伸ばし、指を軽く丸めるバーニングカイザー。

 自らの力の証を叫ぼうとした。


 だが、地面を激しい振動が襲った。


「ロボットのバトルというのは、時間との勝負です!」


 バーニングカイザーが剣の名を叫ぶ前に、大股で襲い掛かって来るライトニングトール。

 右手でしっかり握ったハンマーを振り回す。

 逃げ場を探す隙さえ与えない。



「クラッシュハンマー!」


 バーニングカイザーの正面から大きく振り下ろされた鉄槌。

 バーニングカイザーが、後ろにジャンプし、間一髪よける。


「フレイム……、バスタアアアアアアア!」


 両肩の発射口を激しく燃やすバーニングカイザー。

 解き放たれた火炎砲がライトニングトールへと突き進む。


 だが、ほぼ同時に相手が叫ぶ。


「サンダー……、ブレイクスマッシュ!」


 あまりにも速く地上に落ちた雷が、フレイムバスターの炎を地面に叩きつける。

 公園の草が一瞬燃え、そして雷の衝撃で消えていった。



「北欧神話最強と言われる戦神に、それだけの攻撃しかできませんか」


「俺はまだ、本気じゃねぇ!」


 きらの声が空を貫く。

 バーニングカイザーの右手が、再び前に伸びた。


「サンダー……、ブレイクスマッシュ!」


 稲妻の声とほぼ同時に、バーニングカイザー目掛けて落ちてきた雷。

 バーニングカイザーが反射的に右腕を反らすも、その右足を直撃。



「くっそ……。

 右足に穴が……!」


「さぁ、今度こそ叩き潰されましょうか!」


 ハンマーを振り回し、バーニングカイザーへと迫るライトニングトール。

 体勢がふらつくロボに正面から接近し、ハンマーを高く上げた。



「クラッシュハンマー!」



「フレイム……、フィンガアアアアアアア!」


 間一髪のところでハンマーを持つ相手の右腕を掴み取った、バーニングカイザーの右手。

 頑丈なハンマーを持つ腕に向けて、その手を燃やす。

 ライトニングトールの腕を徐々に焦がしながら、力ずくでハンマーを遠ざけた。



「これが……、バーニングカイザーの意思だっ!」



 煌の声が、より強く空に響く。

 だが、ライトニングトールの左手が高く上がった。



「トリプルサンダー……、ブレイクスマッシュ!」


「トリプル……っ!」


 相手の腕を握ったまま、どこにも動くことができないバーニングカイザー。

 真上が黄色く光り、鋭い力が空気を走る。


「終わりだ……!」


「えいっ!」


 ライトニングトールの腕を持ったまま、左足のブースターだけで右にジャンプしたバーニングカイザー。

 1本目の雷を左に反らし、2本目の雷を後ろに反らした。

 だが、その直後にバーニングカイザーの機体に衝撃が走った。



「くっ……」


 3本目の雷が、バーニングカイザーの右肩に直撃。

 バランスを崩しながら、左足を踏ん張って着地するも、既にライトニングトールの右腕を掴む力はなくなっていた。


「さぁ、本当の終わりですね!」



 その時、空を覆っていた雷雲の下から夕陽が差し、2つのロボの目を輝かせる。

 その上から、白い光が輝き出す。


「翼の音……。

 フレイムファルコン……!」


 白い光が上下に弾け、燃える翼が空を切る。

 フレイムファルコンが、地上に立つライトニングトールに急降下した。


隼徒はやと!」


「カイザーの正義が負けるのを見て、俺様が黙ってるわけないだろ。

 なっ!」


 スピードを武器に、あっという間に地上に着地したフレイムファルコン。

 ライトニングトールが、入れ替えに上空へと逃げる。

 フレイムファルコンがバーニングカイザーを一目見て、ハイスピードで空に翔け上がる!


「かなりのスピードのようですね。

 叩き落とすまでです」


 ライトニングトールの左手が、再び空を掴む。


「サンダー……、ブレイクスマッシュ!」


 高速で迫るフレイムファルコンに、真っ直ぐ雷が落ちる。

 フレイムファルコンが瞬時の判断でよけた。

 だが、ライトニングトールは攻撃の手を緩めない。


「サンダー……、ブレイクスマッシュ!」



 鳴り響き続ける雷鳴。

 逃げるしかない、天空のハンター。

 雷のレスポンスと、ファルコンのスピードが拮抗し、フレイムファルコンが本体に近づけない。



「この雷を砕くパワーさえあれば……」


 フレイムファルコンの首が、下を向いた。

 戦況を見守るバーニングカイザーと目が合う。



「カイザー!

 ブレイバーシリーズの設定にないユナイト、できる? できない?」


「やってみなきゃ分からない!

 でも……」


 そもそも、フレイムファルコン自体、20年前に放映されたアニメでは存在しない支援機のはずだ。

 だが、可能性を信じて、バーニングカイザーとフレイムファルコンが急接近した。



「俺たちがいま伝説を作ってるんだから、できるよ!」



 フレイムファルコンの翼が、バーニングカイザーの傷ついた右肩に触れた。

 煌と隼徒が同時に叫ぶ。



「「アルターソウル、合体ユナイト!」」



 二つの機体の前に眩しい光が出現。

 その光に向かって、心に思い浮かべた名を2機が叫ぶ。



「「キングバーニングカイザー! ブレイズ・ザ・プライド」」



 白い光の中に、2機の機体が吸い込まれた。

 ファルコンの翼が、バーニングカイザーの背中に激突。

 先端に炎を燃やし、天空を駆け抜ける力となる。

 バーニングカイザーの胸部に突き刺さる、炎と一体化したファルコンの頭。

 十字に輝く金色の光が、空に映える。



「「ユナイト・コンプリート!」」



 勇気に燃える灼熱の炎キング・オブ・パワー 標的逃さぬ最速の翼キング・オブ・スピード

 二つの頂点その身に背負う 烈火に満ちた王者の姿

 熱き闘志をむき出しにして 輝く翼で天翔ける

 炎の王者に焦がせぬものなし キングのプライド燃え上がる



「烈火の帝王、キングバーニングカイザー!」



 なんか、隼徒の掛け声でキングって名前にしたけど……、その名に恥じないパワーを感じる!



「キング……、だと……!」



 白い光が正面で弾けたところで、ライトニングトールがすぐに天空で雷を起こす。

 だが、キングバーニングカイザーは動じない。


「サンダー……、ブレイクスマッシュ!」


「キングのパワーとスピードを舐めるなああああああ!」


 解き放たれた雷を、凄まじいレスポンスでよけるキングバーニングカイザー。

 立て続けに雷が落ちるものの、それを次々とかわしていく。


「なっ……」


 ライトニングトールの左手が、一瞬震える。

 その瞬間、胸のエンブレムが赤く輝きだした。



「燃え上がれ! 王なる炎鳥キングバーニングバード!」



 胸に刻まれたファルコンから炎が上がり、キングバーニングカイザーから解き放たれた。

 その炎が瞬く間に大きくなり、巨大な鳥の形へと変わる。



「バーニングバード……、ブレイザアアアアアアアアッ!」



 炎の翼を羽ばたかせ、超高速でライトニングトールへと迫る、意思を持った鋭い炎。

 二つの「最強」のプライドを燃やした翼で、ライトニングトールの体を包み込んだ!



「これが……、ロボ部の本気か……!」



 圧倒的なスピードに、逃れることも雷を放つこともできないライトニングトール。

 黒い機体が少しずつ崩れていく中で、右手のハンマーを大きく振り下ろし、体についた炎を振り払う。

 だが、その時にはキングバーニングカイザーが右手の指を軽く曲げていた。


「キングバーニングソード!」


 キングバーニングカイザーの左腕を覆う、先の尖った四重の装甲が格納された柄とともに押し出される。

 四重の装甲が、燃え上がるように1段1段前に伸び、1本の長い剣が出現。

 刃の全てを輝くオレンジに染め、カーブを描きながら、柄がキングバーニングカイザーの右手に吸い込まれる。


「燃え上がれっ!

 キイイイイング・オブ・ファイヤアアアアアアアアッ!!!!」


 手に宿った熱で激しい炎に包まれる、キングバーニングソード。

 剣が解き放つ勇ましき力は、まさに炎の王者!


「うおおおおおっ!」


「なにっ!」


 圧倒的な火力で、ハンマーを正面からあっさりと叩き割る。

 剣を燃え上がらせたまま上に傾ける、キングバーニングカイザー。

 両手で柄を掴み、とどめの技を叫ぶ。


「キングバーニング……、フィニイイイイイイイイイッシュ!」


 力強い叫びとともに、キングバーニングソードの炎が唸りを上げる!

 激しく燃える剣が、ライトニングトールの体を真っ二つ!


「グアアアアア!」


 斬り裂かれた体に、一気に火が回る。

 激しい爆音を立てて、ライトニングトールの体が砕け散った!


 キングバーニングカイザーが、爆発した相手に振り向くことなく、剣先を前に伸ばす。

 翼に凱旋がいせんの炎を燃やす王者の姿、ここにあり。



~~~~~~~~



 戦いが終わったとほぼ同時に、大出が北欧神話部の部室に入った。

 陽翔はるとが言い放った魂の名を耳にしたとき、大出が陽翔の前に立った。



「鈴木。

 ちょっと廊下に来なさい」


 手招かれるように、大出に連れ出される陽翔。

 すぐに、大出が口を開く。



「まさか、自分をスルトだと思っていませんよね。

 レーヴァテインの牧島と一緒になれると思っているのでしたら、認識を改めていただきましょう」


「僕は……、スルトですよ……。

 あいつにそう言われたんです」


 陽翔が、大出から目を背ける。

 その目は、自然と睦を向いていた。


「鈴木のアルターソウルはスルトではなく、バルキリーです。

 桐原がそう言ってました。

 神々を戦場へと送り出す。鈴木のポジションにぴったりじゃないですか」


「……僕は、そうだったんですか」



 ガックリと肩を落とす陽翔。

 部室に戻っても、そのことを睦に告げる力はなかった。



――君を、正義のヒーローにする。



~~~~~~~~



【今週のアルターソウル】


なし



【次回予告】


俺、神門 煌!

萌と隼徒が、部活のない日に睦をカラオケに誘ったけど、睦は忙しいから来れないらしい。

萌が睦のよく行くコンビニまで一緒に行ったんだけど、そこで睦や母さんのことをいろいろ聞いたみたいなんだ。

……って、そんな睦の前に神崎のアルターソウル、グランゼウスが現れた?

俺たち、ついに神崎先生と戦うのか?


次回、灼熱の勇者バーニングカイザーMAX。

「初めての直接対決」

平和な世界へ、ゴオオオオオオ・ファイアアアアアアア!!!!

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