第4話 本当の強さ教えてくれた③
「大出先生いますか」
校庭に巨人が襲来していることも知らず、職員室のドアを開けた
すぐに大出が入口にやって来た。
「今日、ロボ部でレーヴァテインの話をしていたのは、本当ですか。
さっき、
「やりました」
「何故、私を誘わなかったのですか。
北欧神話の剣、私だったらもっと詳しい話ができたと思いますが?」
やっべ。
大出先生、北欧神話オタクだって、さっき萌が言ってた……。
「俺、あの時まで大出先生が北欧神話に興味があるって知らなかったんです。
それにレーヴァテインのこと、俺よりも周りのほうが結構知ってました」
大出が二度、三度とうなずく。
「それは、アニメやゲームの世界で語られる、間違った設定ですね」
「えっ……。
本当の設定があるんですか」
「ありますよ。
なんでしたら、放課後、毎日でも北欧神話の授業をやってもいいくらい話はあります」
ガチのオタクだ……。
アニメ好きのオタクは教室に何人かいるけど、それ以上のオタクが職員室にいる……!
「いえ……、結構です……」
「なら、今度北欧神話のことを話題にするときは、ぜひ先生を誘って下さい」
大出がそう言い切ったとき、フレイムファルコンが空を切るような鋭い音が煌の耳に響いた。
空がかすかに、炎の色に染まるのが見える。
「すいません。
俺、バトルに行かないといけないです!」
煌が、渡り廊下に出ると、目の前でファルコンと巨人が空で向かい合っていた。
すぐさま、西日に向かってミラーストーンをかざす。
~~~~~~~~
「レーヴァテインの誕生を止めた罪は深いです。
私の野望を止めた
「何故、俺様の名を知ってるんだ!」
翼の先を炎に燃やすフレイムファルコン。
校庭に立つロキ・ザ・トリックスターにハイスピードで迫る。
「おおっと!」
体を一気に宙に浮かせたロキ。
足元すれすれでフレイムファルコンの襲撃をかわす。
「今度は上か!」
翼を激しく羽ばたかせ、フレイムファルコンがロキを追って上昇する。
その時、ロキが下に手を向ける。
「トリックバリア!」
突然、真っ赤な球体のバリアに包まれたロキ・ザ・トリックスター。
バリアの外が、熱く燃えている。
「さぁ、同じ炎属性の私は、敵なしですよ」
「なにっ!」
下から体当たりしたフレイムファルコン。
だが、翼がバリアに当たったところで激しい衝撃を覚えた。
「スピードで砕けねぇか……!」
フレイムファルコンが少しへこませたものの、すぐに内側から傍聴するバリア。
炎が噴き出すように、バリアからはじき出されるフレイムファルコン。
それでも、次々と体当たりを繰り返す。
そこに、上空に白い光が輝いた。
「煌!」
白い光の中に、巨人ロキと同じ大きさのロボットの姿が映る。
その手は既に、熱い炎に包まれていた。
「灼熱の勇者、バーニングカイザー!」
着地した瞬間、上空のロキを見上げるバーニングカイザー。
何度も敵にアタックしては弾かれる、仲間の姿。
煌の激しい怒りが、勇者の眠っている力を解放させる。
「バーニングエンブレム、ブレイブフォーメーション!」
空気を切り裂く破裂音とともにバーニングカイザーの胸が左右に割れ、中から口径1mの大砲が出現。
胸の一番下で輝く炎のエンブレムが、現れた大砲の口を左右から押さえ込む。
次の瞬間、大砲そのものが炎に包まれ、発射口に莫大なエネルギーが湧き上がった。
バーニングカイザーのパワーの
それがいま、力となり、解き放たれる。
「バーニング……、ブラスタアアアアアアアア!」
大砲から解き放たれた、巨大な火の玉。
上空を舞うロキのバリアへと突き進む。
「そんな炎だって、無駄ですよ!」
バリアの外側に宿る炎を、より激しく燃やすロキ・ザ・トリックスター。
バーニングブラスターの火力を受け止め、完全に飲み込んだ。
「くっ……。
同じ属性かよ……!」
バーニングカイザーが上空を睨みつけると、ロキが両手を広げて軽く笑う。
その手元は、風でも舞っているように何かがうごめいていた。
「私の魂は、炎を形にしたものとされます。
所詮、あなたたちは私と同じ属性で戦っているだけです」
地上に向かって手を伸ばす、ロキ・ザ・トリックスター。
そこに力を集めたからか、炎のバリアが少しだけ弱くなる。
それを見たフレイムファルコンの翼が、激しく燃え上がった。
「ウイング……、ブレイザアアアアアア!」
激しい炎を纏い、本気のスピードでロキに迫るフレイムファルコン。
だが、一足早くロキの叫びを耳にした。
「ファイヤーウインド!」
フレイムファルコンのスピードをも打ち砕き、一気に地上へと叩き落とす漆黒の風。
失速するファルコンを目で追う、バーニングカイザー。
低い声が、その体の中を駆け抜ける。
『お前の勇気の全てを、胸に燃える炎に集めろ。
勇気の炎はいま、燃え上がっているはずだ!』
「許さねぇ……!」
最高潮に達した勇者の怒り。
大砲を覆う炎のエンブレムを炎に包み込み、胸全体を激しく燃やす。
煌が高い声で叫んだ。
「バーニング……、フル、ブラスタアアアアアアアア!」
「なにっ!」
ロキ・ザ・トリックスターが、再び体を炎に包む。
だが、一瞬だけ弱まったバリアの隙を、勇ましき炎の球は見逃さない。
直径20mは軽く超える火炎砲。
爆音を上げて、バリアを打ち砕く。
「炎の最強は、俺だあああああああああ!」
煌の鋭い声が、炎の球の勢いを加速させる。
ロキの体に火が回り始めた。
「これが……、勇者の炎……!」
突然、全身に衝撃が走ったロキ・ザ・トリックスター。
体を熱と光に飲み込み、跡形もなく焼き尽くしていった。
バーニングカイザーが拳を握りながら、大地に立つ。
胸の炎は、まだ燃え上がっていた。
「カイザー、強っ!
なんであんなパワーを出せたんだよ」
ロキの魂が消えたところで、フレイムファルコンがバーニングカイザーの前で翼を羽ばたかせる。
隼徒の声が裏返った。
「俺にも分からない……。
でも……、バーニングカイザーは勇者なんだって、今はっきりと感じたよ」
「勇者……、か。
俺様もその一員だと思うと、なんかときめくな」
二つの魂が、白い光の消えた夕焼けの空を見つめた。
~~~~~~~~
「レーヴァテインに続いて、ロキまで現れた……。
私の得意とする北欧神話の世界が、どんどん広がっていきます……」
翌日の昼休み、大出は相変わらず、パソコンで北欧神話の神々について研究していた。
そこに、職員室の入口のほうから声がかかった。
「大出先生。
2年1組の牧島さんが見えています」
「牧島……。
宿題はちゃんとやってるんだけどな……」
職員室の入口に、濃い茶髪の生徒が立つ。
しっかり握りしめた右手の指の間から、光り輝く石が小さく見えた。
「大出先生……。
この力、先生にプレゼントします……」
睦は、大出の手の上で右手を広げ、光り輝く石を落とした。
ミラーストーンの原石だった。
「牧島。
ど……、どうしてそれを持っているんですか」
「転校の前に、渡されました。
私にレーヴァテインの力があるので、その剣でバーニングカイザーや神崎先生のゼウスを倒せって。
……でも、私には無理です」
「なるほど……」
大出がミラーストーンの原石を軽く握りしめた。
完全に大出に渡ったのを見てから、睦は頭を下げ大出の前から立ち去ろうとする。
「牧島。
ちょっと待ちなさい」
「どうしたんですか」
睦が顔を勢いよく大出に向ける。
大出が、先程渡されたばかりの原石を左右に揺らしていた。
「お互いにとって、またとない機会がやってきましたね。
この石で北欧神話の世界を再現する。
それが出来た時、牧島はかなり重要な立場になれると思います」
「レーヴァテイン……。
たしかに、北欧神話の剣みたいですけど」
「そういうことです。
仮入部期間もそろそろ終わりますが、私が主導で部を作ります。
どうですか。運命の魂とともに、1年間を過ごしてみませんか」
大出が睦の前に一歩踏み出す。
睦は目線を下に向けた。
「考えさせてください」
「先生は、待ってます」
睦は、大出にやや深くお辞儀をして、職員室を後にした。
足取りは重かった。
「大ごとになってきた……。
普通の石だと思って受け取ってくれればよかった……」
睦がため息をついたとき、職員室へと向かう白い髪の男子とすれ違った。
直後、睦に振り向いたような気がした。
「なんか、キラくんとは違う力を感じる……」
~~~~~~~~
【今週のアルターソウル】
ロキ・ザ・トリックスター
北欧神話のイタズラ好き。炎の属性を持つ神・ロキが巨大化した姿。
熱いバリアを全身に張り、攻撃を弾き返す。
熱を纏った風で、相手にダメージを与えることも。
【次回予告】
俺、神門 煌!
大出先生が北欧神話部を作って、睦も萌も
ロボ部、俺と隼徒だけになっちゃったから、何をしているか見に行くことに。
……って、ソルフレア教がレーヴァテインの魂を返せと、学校にやってきた。
苦戦するバーニングカイザーの前に、北欧神話のロボまで登場。どうなってるんだ?
次回、灼熱の勇者バーニングカイザーMAX。
「圧倒的な神話の力に」
平和な世界へ、ゴオオオオオオ・ファイアアアアアアア!!!!
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