第4話 ドラゴンの邪悪な笑み

「大丈夫かーッ!!誰か返事をしてくれ」

 

 掠れた声で叫び続ける男だが返事は返ってこない。


「くそッ!!だれもいないのか!!」

 

 足に力が入らず地面に倒れ込んでしまう。

 ドスッドスッと地面を叩きながら涙をながす。

 やがて地面を殴る力すらなくなっていき意識が途切れようとしていた。


「えっ……」


 バサッという音の後に風が吹き荒れ一瞬にして炎が消し飛ばされた。

 景色の変わりように男は驚く。


「助かった…のか」


 男は、激痛を受けながら『助かる』と思い安心するがそれは一瞬にして崩れ去る。

 街に火を落とした存在が火の落ちた場所に降り立つ。大きな尻尾をズルズルと引きずりながら歩き出す。

 ピクピクと鼻を動かすと歩みを止めて進んでいた方向と別の方向に進み出す。その方向は倒れている男の方向だった。

 

「こ、こんどはなんだ」


 男はどんっどんっと鳴り響く音に恐怖を覚える。どんどんと近づいてくる音。

 音の正体が男の前に現れる。


「………」


 巨大な体を持ったドラゴンの姿に恐怖のせいで言葉が出なくなる男。

 ドラゴンは、死にかけの男を見て誰にでも分かるような邪悪な笑みを浮かべ鋭い尻尾を向け槍を突くように男に突き刺す。

 男は微かに動いていた命を一瞬で止められる。

 ドラゴンは、死んだ男を見ながら尻尾を振り投げ飛ばす。

 もう一度ドラゴンは鼻を嗅いで生きた人間が多いところへと向かおうとする。


「ちくしょう…間に合わなかったか…」


 ジェイは悔しそうにそう言う。


「ドラゴン…冷や汗が止まんねぇ」


 震える手を無理やり抑えて剣を抜く。

 それと同時にドラゴンの尻尾が鋭く伸びジェイの体を突き刺そうとする。

 それをジェイは、体を大きく動かしてギリギリのとこで避ける。

 すぐに体勢を立て直そうとするが鋭い爪を力任せに振り払われる。

 これを剣で何とか受け止めるが強すぎる力に吹き飛ばされる。

 空中に浮いたジェイを尻尾で狙いを定めて突き刺す!!が体を捻り避ける。

 伸びた尻尾を蹴りドラゴンの体に向かって加速する。

 ドラゴンの背後で地面に足をつけ剣を構える。


『あの鱗硬すぎるな…体を数回切ったが傷なし俺の剣じゃ何回切ったって傷がつかないだろうな』

 

 ジェイは、ドラゴンを見ながらそう考える。

 ドラゴンは、ジェイを見ながら男に見せた邪悪な笑みを向ける。


「気味の悪い笑顔だな…それで俺が泣いて逃げ惑うと思ったか?」


 ジェイはドラゴンの早い攻撃を避けながら


「俺は勘がいいんだ俺には分かるお前をぶっ倒す奴らが来るって…だからお前なんか怖くない」


 ジェイはそう言うが手は震えてる。恐怖を必死に言葉で誤魔化す。

 ドラゴンをそれを見透かすように笑みを浮かべながら攻撃を続ける。


「決死の時間稼ぎといこうか!!」


 ジェイはぐっと恐怖を抑え込みそう言いながら立ち向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る