第5話 再会
大学は、
とくに大学の二年生と三年生のあいだは話をする機会すらなかった。四年生のとき、大学院に行くかどうか迷ったけど、化粧品が主力の製薬会社に就職する、と千菜美が電話で言って来たのがひさしぶりの連絡だったと思う。そのときも、予定が合わなかったので、けっきょく会うことができなかった。
SNSなんてものがない時代で、ほんとうに「去る者は日々に
美々は大学から大学院に進学した。
身分としては非常勤だったが、美々は土曜日も含めて週六日とも出勤して授業を担当していた。
小ぶりな学校だったので、教員も人手不足だった。それで、英語の主任の先生に時間割を示されて
「悪いけど、こことこことこことこことここと、あと、うーんと、ここと、それから、ここと! 教える先生がいないのよね」
と言われ、
「あ、それ、ぜんぶ教えます」
と答えると、週六日出勤、授業コマ数十二時間とかになってしまったのだ。
そのまじめで熱心な勤務態度が評価されたのか、いつ行っても職員室にいるのでうっとうしがられたのかは知らないが、その英語の主任の先生から
「明珠女学館大学の文化コミュニケーション学部で英語・英語学の教員を募集してるんだけど、行ってみない? あなたみたいな人がこんな学校で埋もれてしまうのはもったいないから」
と言われた。自分で「こんな学校」と言っていいのか、と思ったけど、言われたとおりに書類を出し、選考に通って、いまの職に就いた。
英語学の助教授、いまの職名で言うと准教授としてこの明珠女学館大学に来てみると、その学校の日本史研究室に属する大学院博士課程の学生にあの奴隷女がいた。
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