第4話 小岩千菜美の忠誠心
でも、千菜美は、主人の美々に「忠誠心」というのを持っていたらしい。
そのころから、美々は、学級委員をやったり、修学旅行委員長になったりして、目立つことをよくやっていた。
自分で望んでやったことはほとんどない。でも、なぜか、そういう仕事や役職に推薦されてしまうのだ。
いま思うと、推薦されたら、役割は果たそうと思って調べたり提案したりするので、じゃあ次もこいつ、とくにめんどうくさい仕事はこいつ、くらいに思われていたのだろう。
いまもそれは変わらない。
まったく変わらない。
困ったことだ。
そして、そうなったときに、いっしょに委員をやってくれと言うと、この奴隷は二つ返事で「いいよ」と言う。「これ、一週間で調べて、委員会で発表しないといけないんだけど」と言うと、「だから調べるの手伝って」と言わないうちに、奴隷は、美々にはできないくらいに完全に調べものを仕上げてくれた。
たまたま出会った資料を丸写しして、せいぜい二つか三つ、そこにはない情報をつけ加えただけでレポートだとかプレゼン資料だとか言って提出してくるいまの学生たちに見せてやりたいくらいだ。
しかも当時はインターネットというものがなかったのだ。調べるためには、学校の図書館とか、第二高校よりも立派な第一高校の図書館とか、市立や県立の図書館まで行かなければいけない、という時代だったのに。
クラスや委員会で意見が対立したときには、千菜美はいつも美々を支持してくれた。
対立が起こると、どうしても自分の立場をはっきりさせ、意見を言わなければならないと思ってしまうのが美々だ。
自分のなかで意見をまとめる前に、意見を言ってしまう。
でも、美々と同じように目立ちたがりで、困ったことに美々より頭の悪い子というのは、クラスにはいるものだ。委員会にはもっと高い率でいる。
そういう子たちが美々に対する反論に立ち上がる。美々はもともと言い返すのが苦手だ。どう言い返すのが効果的かなどと考えて、かえって言い返しのタイミングを逃す。
そうやって美々の立場が不利になったときに、千菜美は必ず助けてくれた。
美々の言っていることが正しければサポートしてくれた。あまり正しくないのならば「
二年生と三年生ではクラスが別だったので、クラスで力を貸してくれることはなかったけれど、修学旅行委員会では副委員長になって、委員長の美々のために尽くしてくれた。
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