8. 挨拶


まさかと思ってサイト見たらやっぱり予約投稿されてないやんけー!

てことで暫くは手動で投稿しやす......

みんなごめぬ......


――――――――――――――――――





セーズさんと一緒に玄関に向かうと、アル達が丁度入ってくるところだった。

玄関先で鉢合わせたらしい。


「アルっていつもこの時間に帰ってくるの?」


「そうですね、大体はこの時間ですが緊急の任務が入った際には外出することもあります」


一応週に2回休みがあるらしいんだけど、書類仕事が溜まっているのでその処理に追われてるらしい。

社畜だ......私、騎士団には入りたくないかも。


「アカリ様、右からメイド長のハンナさん、料理長のギルバート、庭師のオーリです」


「改めて、木下燈です!これからよろしくお願いします!」


「お初にお目にかかります、アカリ様。これからはここを家だと思って、過ごしてくださいね」


「おう!お前がアカリかぁ!変わった名前だな!俺のことは料理長と呼んでくれ!よろしくな!」


「おおおお初にお目にかかりますぅ。オーリですぅ......よろしくお願いしますぅ......」


ずいぶん個性的な面々だ。

隙のないカーテシーを披露したハンナさんは、白髪の混じったグレーの髪をきちんとまとめている。

口を固く引き結び、外出してたのに服に皺が無い。

髪と同じ色の目は切長で、怒ったら怖そうだ。

なるほど、第一印象で勘違いしそう。

でも気遣われた言葉で、すぐに良い人だと分かる。


料理長のギルバートさんはムキムキの男の人だ。

腕まくりしたシェフ服は汚れ一つ無い。

シェフは服を汚さないのが実力の印なんだとか。

赤い短髪に金色の瞳が爛々と輝いている。

金色といっても、アルのように透けた色ではなく色鉛筆のような色。

ニカっと笑う顔が無邪気な人だ。


庭師のオーリさんは、意外なことに女の人だった。

セーズさんの話から勝手に男だと勘違いしてた。

尻すぼみの言葉とモジモジと動く手が、少し頼りなく見える。

想像していたフサフサの髭はなく、小さな体にオーバーオールを着てポッケからは手袋が見える。

丸く大きな茶色の瞳に、クセのある赤毛の三つ編みがよく似合ってる可愛らしい人だ。


今日は半休だったらしく、それぞれが買い物を楽しんだようだ。

大きな袋が床に置かれている。

ハンナさんの袋には毛糸や鉤針などが詰まっており、ギルバードさんはフライパンに料理本らしきもの。

オーリさんは肥料や種を少量ずつ買ってきたみたい。

ジークハイド家は仕事熱心な人が本当に多いようだ。




✳︎ ✳︎




挨拶も終わり、それぞれが仕事に戻ったところで私はアルの書斎にいた。

文字が読めない問題をセーズさんが報告したみたい。

いつの間に......


ソファに座る私に、セーズさんがお茶を出してくれる。

ちなみにリリちゃんは仕事が終わったらしく、後ろで待機してくれてる。


アルが重々しく口を開く。


「......文字が読めないというのは、本当か?」


「......うん。書庫に行った時に気づいた」


アルは眉間に皺を寄せ、長いため息を吐く。


「いや、アカリが悪いという意味ではないから気にするな。にしても、こうして違和感なく話せているのは不思議だな」


「今までの稀人は読み書きも出来てたの?」


「多分な。詳しいことは分からないから自力で勉強したかもしれんが、現地人と会った時には既に読み書きが出来ていたそうだ」


私の言語理解はどうやらチートじゃないようだ。


「そっか......明日なんだけど、読み書きと平行して口頭と図で授業ってできるかな?」


そう、入試まであと2ヶ月しかないのだ。

その間にやるべきことは本当に沢山ある。

筆記試験は数学・歴史・国語の3教科。

数学はそこまで難しくないみたいだし、数字の表記も一緒だからなんとなく分かる。

けど歴史と国語が問題だ。

読み書きが出来ないからって、勉強しないわけにもいかない。

なので午前は文字を習って、午後は口頭で授業してもらい、日本語でノートを取るしかない。


それに実技もある。

魔力測定と魔技、体技があるらしい。

これが問題で、私は特にスポーツを習っていたわけでもないごく普通の15歳だ。

とにかく体力づくりをしないといけないし、魔法に関しても全く0の状態からだ。

魔力があるかすらまだ分かんないし.......


時間が足りない......


「分かった。教師には俺が伝えておこう」


「うん、ありがと」


「それで、アルが難しい顔してるのは入試が心配だから......だけじゃないよね?」


だってめっちゃ深刻そうなんだもん。

正直学校に入れなくても、アルからすれば特に損することはないと思うんだよね。


「あぁ......この国では、12歳までに文字が読めない子は捨てられるんだ。著しく知能が低いとされてな。

いや、この2ヶ月で読み書きができるようになれば良いだけだ。教師も口が軽くては務まるまい。理解してくれることを祈ろう」


アルは「この国の悪い文化だ」とため息をついた。

なーるほどね。じゃあ識字率めっちゃ高いんだ。

にしても極端だよね。別に読み書きが出来なくったって出来る仕事はあるでしょうに。

良い政治をしてる王様は気にならないのかな。


「国王陛下も同じ環境で育ち、教育されているので特に疑問に思うまい」


そういうもんなのか。どうせ納得しなくたって、私が政治を変えられる訳でもないしね。

この国で文字が読めないというのは、かなり深刻なようだ。

王様が手配してくれた先生だから、きっと大丈夫だろうしアルに任せよう。




✳︎ ✳︎ ✳︎




その後、ダイニングで初めて食事を取った。

今までの料理もギルバートさん、料理長が作ってくれてたみたい。

めちゃくちゃ美味しかった。


そして今日である。

遂に入試勉強が始まるのだ!

ワクワクと同時にやっぱり不安だ......


屋敷探検でもセーズさんが言ってたけど、これからは応接間で勉強することになる。

ピアノのすぐ隣にあるソファに座ってソワソワしていると



コンコン



「アカリ様、教師のクリスタ様が到着しました」


いよいよ先生とご対面だ!





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今日はちょっと短めでする。

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