第46話 待たされて
空港に着いたら、早速スーツケースを預けてしまおうという事に。しかしこの時運悪く、と言っていいのか、またスーツケースの持ち手が取れてしまった。締め直したネジが緩かったのだろう。何しろドライバーなどの道具がなかったから。スーツケースには目印のバンダナを持ち手に結んでいたので、そのバンダナで持ち手を固定して、預けた。固定したのは夫だが、固定すればと言ったのは私だった。後から考えれば、持ち手だけ回収しておくべきだったのだが。
椅子を確保したい、拠点を置きたい、などと必死になる夫。空港には椅子が所々にあるが、大阪や北海道といった主要な空港では、乗客の数よりも圧倒的に少なくて、なかなか席を確保できないという思いが夫にはあるらしい。
「それならどこか喫茶店にでも入ればいいんじゃない?」
と、去年利用した米子空港を思い浮かべて言った私に対し、最近飛行機に乗ったのが大阪の伊丹空港だった夫は、とにかくセカセカ。そして、新千歳空港のお土産が売っている場所へ行った私は、確かに入れる喫茶店のような所はないと思い知った。飲食店はまた別の場所で、お土産屋が並ぶ場所には数少ないテーブルと椅子しかない。ちょうど席を立つ人がいたのでそこへ行こうとしたら、別の男性が、
「ここいいですか?」
と、席を立とうとしている人に先に話しかけ、席を取られてしまった。しかし、その直後に隣のテーブルが空いたので、そこへ荷物を置くことができた。椅子も確保。何とか、拠点を作れた。
「じゃ、先に行って来ていいよ。」
と言われたので、私はお土産を買いに行く事にした。目の前には白い恋人などのお土産が売っている店がある。ちょっと見てくるつもりで出かけた。
白い恋人はもう買ったからと思ったが、何とチョコレートドリンクの缶を発見。そういえば、雑誌にその缶が載っているのを見た気がしたが、白い恋人パークの店では見かけなかった。これはぜひ買おう。それから、北海道ではチーズを食べようと思っていたのに食べられなかったので、チーズ、もしくはチーズケーキがないかと思っていた。そこで目についたのが、シマエナガのチーズケーキ。可愛いし、これも買いだ。他に、本当は食べたくなかったのに、なぜか試食品のエビスナックを差し出され、食べてしまったりしたが、その店ではその2つを買った。
後はざっと見るだけと思ったが、何しろ広い。トイレに行きたくなって、トイレを探して行ったら並んでいて、戻る時に拠点の場所が分からなくなってちょっと迷って、やっと戻って来た。でも、まだまだ飛行機の時間までは長い。半分使ってはいないからいいと思っていたら、
「遅いよー。」
と、ちょっと怒っている夫。そんなに待たせてしまったか。まだ拠点の向こう側も見ようと思っていたのだが、それは辞めて、夫に買い物に行かせた。
今買ったものの写真と、ウポポイで買ったものの写真を撮り、それからは座って本を読んだ。こうしていれば時間なんていくらでも過ごせる。退屈なんてしないのだ。
すると、夫が意外と早く戻って来た。そしてなんと、
「ラーメン食べよう!」
と言う。ウキウキして言う。いい店を見つけたそうだ。行列が出来ていると言う。うそでしょ、まだ全然お腹空いていないよ。でも彼は本気のようだ。16時半。普段ならお腹も空いている頃だが、いつもよりガッツリだったお昼で、時間も13時過ぎと遅かった。私はもう付き合えない。大体、2人でラーメンに並んだら、拠点はどうなるのよ。まあ、それはいいとしても。
「1人で食べてきていいよ。」
と、私は言った。
「えー、食べようよ。海老ラーメンだって。」
と食い下がる夫。
「いや、全然お腹空いてないし。私ここにいるから、1人で行ってきなよ。」
と言うと、渋々1人でまた出かけて行った。30分ほど経った17時頃、写真が送られてきた。味噌ラーメンに茶色いおにぎりまで付いている写真。こんなに食べるのか。すごいなぁ。
戻って来た夫。美味しかったそうだ。そして、また私の番。まだ行っていない方面へ行ってみた。もう買う物もないだろうと思いながら見に行ったのだが、見つけてしまった。日本酒を。
色々ある。日本酒がどうしても欲しいというよりも、買ったエイヒレやホタテの事を考え、それと合わせる物が欲しいと思ったのだ。やはり北海道の地酒が良い。
けっこう迷ってしまった。また鬼ころしにしようかとも思ったが、あれはアルコール度数も高かったし、別の物がいいかなと。結局300ミリリットルの国稀という特別純米酒にした。
これ1本買うのに30分くらいかかってしまった。しかし、ANAからは遅延の連絡が来ていた。使用する機体が羽田から戻って来るのだが、それが遅れているそうなのだ。
何度か遅延の連絡が届いた。メールでも届くし、構内アナウンスでも言っている。最初は18時半の予定だったフライトだが、18時45分に延び、19時に延びた。
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