第45話 新千歳空港へ

 急ぎ足で白老駅へ向かった。ウポポイも名残惜しいけれども、この電車を逃すと1時間以上ないから。途中、今朝地面の雪が凍っていた場所を通ると、少し氷部分が縮んでいるような気がした。積まれた大きな雪の塊からは、雪解け水が流れ出していた。お日様に当たって溶けているのだ。この雪解け水が夜になって凍るのだろう。

 何とか10分で駅に着いたが、またエレベーターに乗って渡り廊下のような所を通り、向こう側へ行かなければならない。渡り廊下の途中で駅の中に入れそうな場所があったが、そこに立っている警備の人に、

「切符持ってる?持ってないなら通れないよ。」

と言われ、慌てふためきながらまた向こう側へ降りるエレベーターに乗った。

「スーツケースどこだっけ?今のとこから入らないとダメじゃない?」

夫が言うので、

「いや、あっちから入れるよ。改札の隣のロッカーだったでしょ。」

向こう側へ降りて、ほぼ走りながらそんな事を言いつつ、朝出てきた駅舎へ入って行った。夫はやっと、そこのロッカーに入れた事を思い出したらしい。

「俺、スーツケース出すから、切符買っといて!」

と振られ、ちょっとびっくり。えっと、どうやって買うの?特急?とにかく券売機もないので、駅の窓口に行くと、

「7分遅れてますから、焦らなくても大丈夫ですよ。」

と、まず駅員さんに言われた。あ、そうなんだ。よかった。もうね、あと1分くらいで来ちゃうかと思って焦ったよ。ホームはまた向こう側だし。

「新千歳空港まで2枚。」

と言うと、

「自由席でよろしいですね?」

と聞かれ、はいと答えた。ちゃんと駅員さんは分かっているので、南千歳駅までが特急、その先は普通という風に切符を出してくれた。

 さて、改札を通り、線路の向こう側まで階段を上って降りて、列車を待った。若い子たちが何人か同じホームにいた。

 7分遅れで特急電車、北斗がやってきた。自由席の車両に乗ろうとしたら、扉の前には外国人の女性などが数人、スーツケースの上に腰かけていた。もうすぐ下りるのかなと思ったが、客車の中に入って行くと、そうではない事が分かって来た。座席は満杯。その上、通路まで立っている人でいっぱいだ。客車の入り口を入ってすぐのところにスーツケースを入れる棚があり、いくつも入れてあった。しかし空きがあったので、うちのスーツケースもそこへ入れた。私が客車に入るとちょうど通路もいっぱいで、たまに列車が揺れて扉に近づいてしまうと、自動ドアが開いてしまった。

 そうそう、私が列車に乗り込んだ時、小さいポーチのような物が落ちていた。それを拾って、その周りに座っている女性たちにそれを見せた。すると、日本人のような顔立ちの女性が「あっ」と反応したので渡したら、

「Thank you.」

と言われた。そうか、日本人ではなかったのだな。こちらは何も言わなかったが、ちょっと外国人と交流出来た気がして嬉しい。もちろん、顔ではニッコリして、コミュニケーションを取ったつもり。あ、そんなのは取ったとは言えない?

 南千歳までは1駅だが、30分くらいかかる。立ったまま、揺れる状態で乗っていた。アイヌがどうとか、ゴールデンカムイがどうとか、夫と話をしていた。この時急に、ゴールデンカムイの映画を観ようかな、と思った。それを夫に言うと、

「アニメで全部観ようとすると長いけど、映画ならぎゅっと詰まっていていいんじゃない?」

と、言われた。

 南千歳駅に着いて、特急を降りた。ドアの前にたくさんの人がいるから、降りるのもなかなか大変だった。南千歳駅から快速エアポートに乗って3分、新千歳空港に着いた。こっちは短いのね。

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