第43話 アイヌの家(チセ)
食べ終えて、フードコートを出た。また入場ゲートを通り、今度は奥にある家の展示スペースへ向かった。途中、人型が繰り抜いてある雪の壁があった。撮影スポットのようだ。そこに私が入り、夫に写真を撮ってもらった。何とか入れた。すると、
「150cmまでだって。」
と、後から夫が言った。ありゃ、私はアウトだったか。撮った写真を見てみたら、片足は出ていたみたいで、無理に全身入れないで良かったと思った。というか、子供用だったのか。お恥ずかしい。
湖が広がる。そこから吹いてくる風がとっても冷たい。風が強いのだ。それでも、パノラマ写真を撮ったりしながら進んだ。じきに、家が立ち並ぶエリアに着いた。藁葺き屋根のような家。お、家の前に鮭がたくさん干してある。近づいて見ると、どうやら本物の鮭のようだ。これまたグロいというか。内臓は取り除き、逆さに吊るしてあるのだった。お腹の中が見えていて、魚を食べ慣れている我々日本人でも、なーんかちょっと気持ち悪い気が。しかし、こうやって「鮭とば」を作るという事なのかな。
「家」をアイヌでは「チセ」と言うらしい。色々なチセがある。シノッチセ、ポロチセ、ポンチセと並ぶ。中に入れるチセがあり、今から始まりますよーと言っているところがあった。確かポンチセだったと思う。
中に入ると温かい。靴を脱いで上がる。囲炉裏があって、アイヌの民族衣装を着た1人の男性が、その前に座っていた。囲炉裏を囲むようにベンチのようなものがあって、そこに数人の観光客がいる。今、アイヌの男性と談笑している。白人の女性が1人、アイヌの男性の正面に座っていた。私たちはその後ろに立った。
時間になったようで、アイヌの男性がちゃんと話し始めた。彼は「語り部(かたりべ)」だそうで、昔から伝わる、千夜一夜物語のアイヌ版みたいな、物語を語る人だそうだ。本来は何時間もかかるそうだが、ここでは少しだけ語ってくれるという。ああ、だが、私たちの前に座っていた白人女性が、席を立って出て行ってしまった。言葉が分からないからいる意味がないと思ったのだろうか。しかし、なんだか不慣れな匂いがするなーと思っていたのだが、この家の匂いではなかったようだ。彼女がいなくなったらしなくなった。
「語り」が始まった。トントンと囲炉裏の縁を叩きながら、リズムよく話し始めた語り部さんだが、なんとアイヌ語!何を言っているのか全然分からない。先に、こういうお話だという事は聞かされていたが、それにしても。いやあ、国内旅行をしながら、今日は少し外国に来たような気分を味わえたかも。
その語りが終わったら、そのお話をほぼ全て、日本語に置き換えて説明してくれた。ちょっと硬い日本語もあって、訳されたというのが分かる。それにしても、語り部さんは毛深いなーと、変な所に感心してしまった。やはり、寒い地方では体毛がたくさんあった方が良いのだろうな。
お話が終わり、この後は写真撮影もOKだと言われた。語りの中に出てきた、家の中の宝物と同じように、その家の隅には黒い入れ物がたくさん積んであった。また、赤ちゃんの人形が天井から吊るされた板に乗っていて、これがアイヌ式ゆりかごなのだろうと思うと、面白かった。吊るされてはいるが、地上5cmくらいの所で、危なくはない。軽く揺らすと赤ちゃんがよく寝たのだろうな。
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