第42話 ジンギスカン

 後で来ようと話していたジンギスカン定食の店は、入場口の外にあった。なので、一度ゲートを通過しようとしたら、再入場券をくれた。この再入場券があれば、今日は何度でも出入りが出来るそうだ。

 お目当ての店に入ってみた。すると、ファーストフードのような、フードコートのようなお店だった。食べ物が売っているカウンターの上のメニュー看板を見てみると、牛串とかから揚げとかの、簡単な食べ物しかないようで、後はドリンク。外の看板にはもっと定食とかラーメンなどが載っていたのだが。店が違うのかもしれないと、一度出て、隣の店の方へ入ってみた。しかし、そこには別のメニューがあって、アイヌ文化に源流のある食材を使った創作料理だという。メニューを見ても何が食べられるのかよく分からないのだが、ちょっとお高い雰囲気。店の入り口まで行ってみたが、家族連れも入って行くものの、どうも高級感が漂う。

 もう一度外に出て、先ほどのフードコートに入ってみた。ちょっと出て、中間にある看板も見て、やっぱりこの店でいいのでは?とウロウロしてしまった。結局、ちゃんとカウンターのテーブルの上に置いてあるメニュー表にはジンギスカン定食もあって、ここでいいのだと分かった。

 お店の中は空いていた。もう13時を過ぎているし、元々人が少ないので。カウンターで、ジンギスカン定食を2つ注文した。そして、夫がすかさず

「生ビール。」

と言ったので、私が、

「生ビール2つ。」

と、お店の人に言った。そして、プラスティックコップに入ったビールを2杯受け取って、テーブル席へ運んだ。定食の方は、出来たら呼ばれるそうだ。

「カンパーイ。」

という事で、ビールを飲む。あ、カップにアサヒビールと書いてある。そうか、ここはもう札幌ではないから、サッポロビールではなくなったのか。札幌ではどこでもサッポロビールだったよな。

 席には日が当たっていて暖かい。しかし、ビールはお肉と一緒にと思い、あまりぐびぐびとは行かずにとっておく。

 じきに定食が出来上がった。取りに行くと、ワンプレートにご飯とお肉(羊肉。マトンだろう)と野菜が乗っていた。そして、お味噌汁付き。

 うわー、失念していた。お味噌汁付きだったか。定食だもんな、そうだよな。飲み物があるのに、ビールまで頼んでしまった。ああ!そういえば、ついつい肉があるからと自分の分も注文してしまったが、いつもランチビールは夫の物を1口2口もらうだけだったではないか。なんだか夫と一緒にいると、どんどん彼のペースに引き込まれる。大体が食べ過ぎ、飲みすぎになるのだ。とはいえ、注文したのは自分なので、彼ばかりを責めるわけにはいかない。だが、私はあまり水分を摂れない質なのだ。ビールと味噌汁両方はちょっと……。かといって、残せない性分でもある。

 ワンプレートには、かぼちゃやパプリカ、ジャガイモの素揚げに、ブロッコリーといった野菜が乗っている。後は肉。羊肉は大きめの小間切れになっており、味付けは生姜焼きのような味だった。ご飯が進む味である。というか、お肉に合わせるのは、ご飯かビールかどちらかで良かった。ここでもダブっている。しかし、残せない……。

 だが、念願のジンギスカン料理である。食べられて良かった。やはり少し羊肉の臭みも感じるが、味付けも良く、美味しい。噛み応えがあるのはラムではなくマトンゆえか。

 肉を食べ、ビールを飲み、肉を食べ、ご飯を食べる。時々味噌汁。そしてビール。うーん、もうダメだ。ビールは3分の1か4分の1ほど残し、夫にあげてしまった。これ以上飲んだらお腹がチャポチャポになってしまう。

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