第37話 苫小牧(白老)へ

 時刻は9:20頃。線路に停まっている電車を見て、

「顔がいかついね。」

と、夫が言って写真を撮っていた。何故いかついのかと思ってよく見ると、先頭車両の、つまり電車の顔の下の部分に雪を押しのける為と思われるバーが付いているからだ。顔の下に顎のような感じで付いているから、顎が発達したいかつい顔に見えるのだ。なるほど、あのバーのお陰で北海道では雪でも電車が走れるのか。もし、あのバーが東京都内を走る電車にも付いていれば、大雪(東京にしては)が降っても電車が止まる事がないのに。滅多に雪が降らないのに、あれを付けておくわけにはいかないのかね。

 北斗がやってきて、乗り込んだ。指定席へと進む。いつものように、私が窓際に座り、膝の前にスーツケースを置く。夫の前には置けないのだ。足とスーツケースは両方存在できないのだ。私の足でもけっこうピッタリ。正直言って狭い。

 それでも、テーブルが出せるのがいい。前の座席の後ろに付いているのだ。私の前にはスーツケースがあるから出せないが、夫の方にはテーブルが出せる。テーブルには飲み物を置くための溝も一応ある。浅すぎるけど。新幹線でも同じだが。

 夫は、昨日サッポロクラシックのロング缶を1缶しか飲まなかったので、いやいや、1缶も飲んでいない。私が半分飲んだのだが、とにかく1缶残っていた。それを持ってきていて、今ここでプシュッと開けた。また、お弁当の他におつまみとして焼きチーズを買ってきたようだ。

 私はとうきびモナカを早速食べる。袋から出すと、トウモロコシの形。粒を模して凸凹している。一番上の先端にはアイスが入っていなかった。そこをかじり、更にかじると、アイスがぶにゅっと横に広がった。危ない。だいぶ溶けている。けれども、この溶け具合が実は美味しい。ソフトクリームのようだ。だが、かじりにくい。

 そうだ、写真を撮ろう。かじっている途中のアイスと、窓の外の景色とを一緒に写真に収めた。食べかけのアイスはあまり美しくないが。最後はだいぶ皮(モナカ)が足りない感じで、アイスがはみ出てしまった。そうか、逆さから食べた方が良かったのか。それにしても、お腹いっぱいだ。

 今日は割とお天気が良い。窓の外は、やっぱり雪、雪。線路脇にはたくさんの雪。キラキラと日に当たって光っている。と、夫が、

「やっぱりご飯が多かった。」

と言っている。私もホッキ貝を食べてみたいし、ちょっと手伝ってあげるか。アイスでのお腹いっぱいは、少し時間が経ったら落ち着いた。まあ、夫もビールと一緒だからご飯はあまり入らないよね。

「小さい方にすればよかった。」

とか言っているので、けっこうご飯も食べてあげた。ホッキ貝はぷりぷりで美味しかった。ご飯も炊き込みご飯で美味しい。が、お腹いっぱいになる。

「腹具合は同じにしておかないとね。そうしないとお昼の事があるから。」

と、夫は言った。この言葉、覚えておいて欲しい。そして、夫はお弁当を食べ終えた後、焼きチーズを食べながらビールを飲んでいる。チーズは入るのね。ああそれと、このお弁当に付いていたお箸が珍しいものだった。割り箸ではなく、伸縮式の箸だった。縮んでいて、使う時に伸ばすやつ。その伸ばすところが透明度のあるエメラルドグリーンだった。

 そういえば、カバンに付けていた白い恋人のキーホルダーだが、やっぱりどう考えても失くすのが心配で、カバンに付けるのは辞める事にした。水色と茶色のカバンにすごく似合っていたので、だいぶ迷ったのだが。やはり落とす心配のない、カバンの中にしまっておく物に付けておこうと思った。今は大のお気に入りなので、出かける時にいつも持って出かける物、定期入れに付ける事にした。うん、定期入れはあずき色なのだが、これも良く見ると白い恋人と合っている。電車に乗る度に取り出すし、なかなか良い。

 白老駅に着く少し前から、扉の前に移動した。窓の外を見ると、だいぶ良い天気で、しかも海が見えた。おお、太平洋だ!時刻は10時半。1時間で太平洋まで来てしまったのか。特急って速いな。

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