第33話 ラムしゃぶ

 一通り氷像を見終わった。なかなか見応えがあった。夫も、見る前は興味がなさそうだったのだが、実際にライトアップされた氷像を見たら満足したようだった。

 17:20と、ちょうどいい時間である。予約した店へ向かう事にした。途中、朝見たラーメン横丁の反対側を通った。すると、その横丁には人がたくさんいて、並んでいるようだった。いくつかの店があるわけだから、列はいくつも出来ているのだろう。

 夫が地図を見ながら首をかしげている。おかしい、この辺かと思ったのにない、と。

「あ、違った!」

何やら勘違いしていたようで、氷像を見た通りの反対側だった事が判明。急いでそちらへ向かった。思ったよりも遠くて、滑らないように気を付けながらも急ぎ足。そう、足元は常に雪の上。そういえば、札幌のコンビニには、靴の裏につける滑り止めが千円くらいで売っているという話だ。もし、長靴でダメだったらそれを買おうと思っていたが、大丈夫だったので買っていない。東京でその滑り止めを買おうとしてもなかなか手に入らないから、むしろこの機会に買っておくのもいいかと思ったのだが。いや、今はネットで手に入るか。で、その滑り止めだが、道の真ん中に片方が落ちていた、というかほとんど埋まっているのを見かけて笑ってしまった。片方だよ、落とした本人、気づかずに片方だけ付けて行っちゃったわけでしょ。こういうの、関東南部では見ない光景だよな。

 着いたらしい。けっこうディープなすすきのを通って来たような気がする。お店の名前は「工藤羊肉店」だ。極薄ラムしゃぶ専門店だとか。ビルの中に入っていた。

 予約をしていたので、席が用意してあった。カウンター席の角っこ。2人の間にはガスコンロ。私はガスコンロが苦手。顔が熱くなるし、ヤケドしそうで怖い。家にも卓上ガスコンロはない。IHコンロはあるが。

 いやー、外は寒かった。夫は店に入るなりトイレに直行していた。席に座るとスープが出てきた。水やお茶ではなくスープ?と不思議に思ったのだが、それを飲んだら温かくて感動。体の芯から温まる気がする。

 さて、注文を考えよう。色々なコースがある。飲み放題付きは辞めようと言ってまず排除。食べられなくなるからね。あとは、食べ放題にするか、その他のコースにするか。その他のコースの方が安いわけだが、これで充分な気がした。なので、お肉2人前、野菜1人前のコースにした。他に、お肉3人前コースや、お肉と野菜1人前に〆やデザートが付くコースもあった。

 飲み物を1杯頼まなければならないという事だった。お肉なので赤ワインをチョイス。夫はやっぱりビール。それで、後は出汁を選ぶ。1つは羅臼昆布出汁と決まっているので、もう1つの方を選ぶ。そうそう、羅臼昆布は出汁を取るのに向いている、と先日訪れた和食展で学んできた。日高昆布は柔らかいので昆布そのものを食べる料理に向いているとか。だが、羅臼昆布は高級品。なかなか出汁を取る為に買うのが難儀。ここは流石産地。出汁用なのだから羅臼昆布を使ってくれるわけだ。そして、もう1つの出汁を選んだが、それは今日はないと言われ、トマト出汁にした。

 ワインが出てきた。グラスが大きくてびっくり。嬉しいじゃないか。そして、鍋がコンロに掛けられた。ここで鍋の写真を撮ったのだが、実際に具が入っている所は撮らなかったのを、後で後悔したのだった。

 さて、野菜盛りとラム肉が出てきた。ラム肉、すごい。削られて筒状に丸まったラム肉が、ピラミッド状に積み上げられていた。綺麗。まるでバラの花びらのよう。いや、花びらはピラミッド状にはならないが。

 早速しゃぶしゃぶ。昆布出汁でしゃぶしゃぶ。肉はほんのちょこっとお湯に通せばいいらしい。だから2、3回しゃぶしゃぶしただけで取り出したのに、どうもパサパサな感じになってしまう。それと、ワインに合わない。

 一方、トマト出汁でしゃぶしゃぶした方はワインに合う。ニンニクが効いているようだ。このトマト出汁にして正解だった。お肉は、先ほどのピラミッドで2人前だと言われた。私はそれで全てだと思ってしまったが、そうではなかった。このコースは1人分がお肉2人前なのだから、2人だからもう一度2人前が来るのだ。

 店員さんが、カウンターの中央でお肉を削っていた。夫曰く、削り方がさっきと違ったそうで、出てきた肉を見てなるほど、またびっくり。今度は先ほどのように筒状に丸まってはおらず、ぺしゃんこ。ピラミッドではなく3段か4段に重ねて並べられている。見た目は先ほどの方が綺麗だが、さっきのは凍っている感じだった。こっちは凍っていない感じ。そして、お湯に通してみたら、ああ、こっちの方がいい。昆布出汁でもパサパサしない。柔らかいのだ。

 それにしても、やはりラム肉には独特の臭みがある。臭みというか、慣れない香りというか。夫は旨い、旨いと言ってよく食べた。私はそろそろお腹いっぱいになった。いつもね、しゃぶしゃぶで食べ放題をすると思い知らされることがある。私がお腹いっぱいになってから、夫のスピードが上がって来る。そろそろ終わりかと思ってから、何皿も注文するのだ。だから、私は自分が満腹を感じたので、もうお肉は食べず、夫に食べさせることにした。食べるスピードが私の方が速かったようだし、夫はもう要らないのかと思ってから、先に述べたような事になるからね。もっと食べてよ、というような事を言っていても、騙されちゃいけない。これで無理して半分食べた結果、足りないからと追加で頼みかねないからね。

 隣のお客さんのところにご飯が運ばれてきた。炙ったラム肉で巻かれたご飯だ。それを見た夫が、

「〆とかがあっても良かったかもな。」

と言っていた。確かに。でも、それだとお肉半分になったけどOK?

 18時半頃だろうか、食べ終わって出てきた。そういえば、ガスコンロが目の前にあっても、全然顔が熱くならなかった。寒いから?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る