第31話 一時ホテルへ

 独りでホテルに戻れるのか、ちょっと心配だったのだが、割と道を覚えていて、迷わずに戻れた。もちろん、迷ったらナビに頼ればいいのだが。いや、私はナビがあっても迷うけど。

 部屋に戻って、早速夫に魚介類を買った話をした。やっぱり6千円は高かったみたいだ。惑わされたか……。でも夫は、

「まあ、いいんじゃない?」

と、笑って言ってくれた。

 だが……夫が長男の為に、鮭の切り身のTシャツを買っていたと前述したのを覚えているだろうか。それならば、こんなに本物の魚介類を買う事はなかったのかもしれない。夫があの柄のTシャツを買ったのは、長男が魚介類好きだからだ。それは聞かずとも分る。というわけで、伏線回収。

 夫は、ビール博物館の後、時計台に行ったそうだ。その両方とも、私も行きたかったな。時計台は、高校生の頃に前までは行った事がある。中には入った事がない。当時は入れなかったのかな。今は200円のチケットを買って入れるらしい。

 夫は、ホテルに戻ってからは、スーツケースを直していたそうだ。やはり中にネジなどが落ちていて、それを探し当て、持ち手をまた付け直したとか。すごいじゃないか。ということは、新しいものを買うのは辞めたのだな。よかった。

 夫は、私と別れた後に札幌駅からビール博物館まで歩いたそうだ。それが、思いのほか遠くて、疲れてしまったと言っていた。1人になると途端に歩き過ぎてしまうという現象に名前を付けたい。

 15時前だった。ラムしゃぶの店の予約までは2時間半ある。少なくとも1時間くらいは部屋でゆっくり出来る。早速靴を脱ぎ、ベッドの上でくつろいだ。そうそう、お土産の写真を撮っておこう。ブログに載せるためだ。家に帰ってからでは、あちこち余計なものが写り込む。この白いシーツの上で撮っておくのがよかろう。しかし、ちょっと照明が暗いというか、オレンジっぽい色なのがイマイチだった。


 「明日どこ行く?」

と、夫に聞かれた。特に決めていないと言うと、行きたい所があると言う。それは、苫小牧だそうだ。小樽くらいは視野に入れていたが、苫小牧とは想定外だった。我々、家族旅行で小樽には行った事があった。あれから15年くらい経っているので、だいぶ変わっただろうが、変わらないところもある。むしろ変わらないところこそが観光資源だとも言える。なので、また小樽に行くというのも躊躇していたのだ。

「苫小牧?」

「ウポポイって言って、アイヌ文化の施設があるんだ。」

ウポポイか、聞いたことあるぞ。そういえば、高校時代に行ったのが、ポロトコタン村だったなぁ。

 私は高校時代、合唱をやっていた。札幌で行われた、朝日コンクールの全国大会に出場したのだ。埼玉から参加するので、せっかく北海道まで行くから、コンクールの翌日には観光をしてから帰ろうという事になっていた。その観光先をどこにするか、部員全員で多数決をとった。他の全国大会では選択肢なんてなかったのに、札幌大会の時だけはあったのだ。小樽などに行く日本海側か、ポロトコタンなどに行く太平洋側か。私は小樽に行ってみたかったので日本海側に手を挙げたが、太平洋側の方が人気が高く、ポロトコタンへ行ったのだ。まあ、そんな事もあって、家族旅行では小樽に行ったのだが。

 そのポロトコタンというのも、アイヌ民族の紹介施設だったと思う。ウポポイというのも、何年か前にニュースで見た気がするが、同じようなものだろう。そして、夫がゴールデンカムイというアニメを観ているらしいので、その影響でそこへ行きたいのだろうと察しがついた。ゴールデンカムイの雪像を見た時に、夫が私に「知らないでしょ」と言った事で、夫は知っているのだな、と思ったのだ。

 ということで、最終日は苫小牧に行く事にした。新千歳空港を越えて行くということで、割とここから時間がかかるらしい。特急電車で行くとか。帰りの飛行機の時間が決まっているので、ちゃんとどの電車に乗るのか決めておかないといけない。そして、明日は目覚ましを掛けてちゃんと決まった時間に起きる事になりそうだ。

 電車の時間を調べ、行きの特急電車の指定席を取った。並んで取るのが難しいかもしれないと言った夫だが、たまたま2つ、ポコッと空いていたそうで取れた。キャンセルが出たのかもしれない。ここだけの話、私は離れていてもいいと思ったのだが。本を読めるし。

 今朝、札幌駅の券売機に、長蛇の列が出来ていたのを見た。普通の券売機は並んでいないのだが、指定席券を発券できる機械には行列が出来ていたのだ。もし、これから乗ろうとしている時にあれだけ並んでいたらヒヤヒヤするだろう。発券は今夜のうちにしておこうという事になった。なので、少し早めにここを出る事に。

 その前に、買ったお土産を宅配で送る事にした。ちょっと待て、だとしたらクッションを買っても良かったかも……。それに、ちょっと考えてしまった。テレビ父さんや白い恋人、天ぷら妖怪、ウルトラマン怪獣など、あれこれクリアファイルを買い集めてしまうのも、ありだったかもしれないと。白い恋人パークでは、パッケージそのものの緑色のクリアファイルが売っていたのだ。あれには正直惹かれた。でも、例のごとく、思いを打ち消してしまった。ちょっとだけ後悔。でもでも、クリアファイルは使ってしまったらボロくなるし、かといってしまい込んでいたら意味がない。飾っておくのも埃かぶるし、そんなに広げておくスペースもない。ああ、悩ましい。

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