第19話 ボキボキの芯

 部屋で髪を乾かしたり、化粧水で肌を整えたりしてから、ベッドの枕に寄りかかって座り、日記を書くことにした。カウンターテーブルと椅子はあるのだが、荷物を色々置いてしまって狭いし、そもそもベッドがあって椅子もあまり引き出せない。足もだるくて投げ出したいし。

 持ってきたシャープペンシルをカチカチとやって芯を出したが、なんだかゴミが落ちたような気がした。改めてカチカチやると、あれ?なんか2ミリくらいで芯が落ちた。あら、芯が無くなるところだったかしら?と思って、更にカチカチやると、また2ミリくらいで落ちる。あ?ああ?芯が全部2ミリに折れてるー!

 そうか、今朝スーツケースのストッパーを解除するのに、シャープペンを使ってガチガチやったから、芯が折れてしまったのか。手のひらにカチカチと全部1本出し切って、もう1本入れてある事を祈ったが、もう芯がなかった。あらら。仕方なく、日記はボールペンで書いた。まあ、どうせシャープペンで書いても消しゴムを使ったりしないのだから、ボールペンでもいいのだ。

 しかし、このシャープペンシルには後日談がある。家に帰ってから新しい芯を入れてカチカチしたら、やっぱり2ミリくらいに分割されて出てくるのだ。どうしてこうなってしまうのか、1本を全て2ミリに分割し終わるまで思い至らなかった。だが、分かった。ペン先が曲がっていたのだ。そりゃそうだ。引っ込んだままのボタンを、隙間にペン先を入れて持ち上げようとしたのだから。それで、芯自体は折れていなかったのに、その曲がったペン先を通る時に折れたのだ。芯を2本無駄にしたのだ。ペン先を真っすぐに戻す事も出来たかもしれないが、だいぶ古いペンだったので、これでおさらばしたのだった。

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