第9話 お昼ご飯はどうする

 家にいる時には、旅行中にどうするか、という話をあまりしなかった。大抵、行ってから決めるのが夫の性格だ。私は前もってあれこれ計画を立て、直前にはあまりガイドブックも見なくなる。決めるのが早過ぎる性格である。

 夫は羽田空港に着く少し前から、札幌に詳しい知人とLINEのやり取りをしていた。お勧めのお店を聞いたようだ。私もそれなりに食べたい物を考えておいたが、夫は知人に聞いた結果、お昼に海鮮丼を食べようと言い出し、更に明日はラムしゃぶを食べようと言う。それで、飛行機に乗り込んだ後、まだ出発する前にあれこれ調べたりして、ラムしゃぶは明日の17時半に予約していいかと言った。いいよと言って、2日目の夕飯はラムしゃぶに決まった。そんな珍しい物、初めて聞いた。だから食べたい。だが、私はジンギスカンとか、牛肉も食べたかった。それと、ホッケやカニ、ウニなどが食べられて、日本酒が飲める海鮮居酒屋にも行きたかった。ただ、どこの店に行くかは決めていなかった。もちろん、2人で行くのに勝手に決めたりはしない。昔、子供連れの時には全部私が決めておいたものだが。だって、みんな忙しそうで調べるのは大変そうだったし、当日になってみんなの意見を聞いていたら決まらないし。でも、全て決めてしまっていたのも、あまり良くなかったのかもしれないな、と今は思う。

 夫は、今日のお昼は海鮮丼だと言って調べたようだが、知人から聞いたお店は残念ながら、予約でいっぱいだったそうだ。知人からはお勧めのお寿司屋さんも聞いたみたいで、今日の夕飯はそこにしようと言った。

 飛行機が出発して、機内Wi-Fiに繋げたが、全然インターネットにつながらなかった。混み合っているからなのか?ネットに繋がらないので、もうお店の情報を調べる事が出来なくなった。

 離陸して、しばらく景色を眺めたり撮影したりして、雲が出てきたから持ってきた新聞を読んでいた。朝、読み終わらなかったので持ってきたのだ。だが、

「お昼、決めようよぉ。」

と夫が言う。仕方ない。私は新聞を辞め、ガイドブックを出した。そして、

「スープカレーは?」

と言って、スープカレーの特集ページを開いた。家にいる時にも何度か「スープカレー」という単語を口にしたのだが、夫は札幌=スープカレーという認識がないようで、いつもスルーされていた。だが、今は違った。ガイドブックの見開き2ページに、色々なお店のスープカレーの写真が載っているのを見て、

「いいねー!」

と乗り気になった。このページも何度か見せたと思うのだが。それで、お昼はスープカレーに決まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る