第7話 朝食

 出発ロビーへ行き、ANAの手荷物自動預け機へ。とりあえず手荷物を預けてしまおう。飛行機は、いつも私が手配してきた。夫は、自分は独りで飛行機に乗れないと思っている。だが、いつだって先頭に立って家族を導いてきたのだから、他の人から見たら、独りで乗れないようには見えない。

 自動預け機も、この間やったばかりだというのに、私はオロオロ。夫はしばらく見ていないはずなのに、出てきたタグをスーツケースの持ち手に通し、貼り付けている。ああ、そうか。そうだったな。この間の一人旅では私も自分でやったのだ。もっとじっくり時間をかけてやったのだろう。読めばわかるのだが、どこに書いてあるのか、何を差しているのか、確認すると遅くなるのだ。どんくさいとも言う……いや、それよりも、人に待たれていると焦ってしまって余計に見えなくなるのかもしれない。独りなら、それほど時間を掛けずに文字を見つけられたのかもしれない。

 荷物を預けた後、自分たちの電子チケットを見て、入場ゲートを確認した。Cゲートだったので、今いる場所よりも通路を挟んで右の方へ進んだ。あ、こっちにも手荷物預け機がある……。あれ、こっちで預けた方が良かった?

「やっちゃったか?」

夫が言う。

「いや、どっちもANAだし、チケットをピッとやってから預けたんだから、ダメならそこでダメって言われるでしょ。」

と言いつつ、私は一抹の不安を感じてしまう。

「ま、あれが無くても何とかなるでしょ。」

夫が言うが、いや、ダメなはずはない。そんなはずは……。スーツケースが無かったら困るよ。

 保安検査を受け、入場した。

「来るたびに、システムが変わるな。」

と夫が言う。このチケットだって、この前家族で飛行機に乗った際は、QRコードを印刷して渡したのだよな。あ、LINEで送ったのだったか?いや、あれは遊園地のチケットか?とにかく、スマートフォンの「ウォレット」にAirDropで送ったのは初めてだったのだ。

 朝ごはんをどこで買うか、あっちに行くか、こっちに行くかと地図を見てあれこれ言っていると、

「ANAフェスタなら、ここでいいんじゃない?」

と夫に言われた。目の前にもANAフェスタがあった。私は地図で何を探していたのだか。ここで買うならマイルが使える。マイルを使う為に、昨日ANAマイレージアプリを入れておいたのだ。

 私がサンドイッチにしようと決め、あとはアプリを出して、マイルをチャージしたりしていると、夫はとっくにライスバーガーを買っていて、

「どうした?」

と言っている。やっとサンドイッチの支払いをして、無事マイルを使えて、目の前の椅子のところへ行くと、夫はビールの入った紙コップを持っていた。一口もらった。私は水筒があるから、飲み物は買わなかったのだ。

「これ、2杯目は半額だって。」

と言っている。だから2杯飲むのかと思ったら、そうではなかった。寒いし、朝からそんなに飲むわけがないか。いや、この人はそうとも限らないが。

 やけに空いていると思ったが、考えてみたら、ここの搭乗口から乗る飛行機がしばらくないのだろう。食べ終わるとフライト時間まで残り30分を切っていたので、我々の搭乗口、66番の方へ向かった。あまりゆっくり食べている時間はなかった。もっと搭乗口の近くで食べれば良かったと思った。それなら、まだまだゆっくり食べられたのに。

 ところが、66番搭乗口へ向かうにつれ、人が増える。そして、搭乗口の方へ曲がると、わんさか人がいた。座る所などないくらいに。びっくりだ。

 ところで、我々の乗る飛行機には、ラッピングがしてあった。黄色くて、二重丸が書いてあって……スターウォーズ?ああ、映画のあれか。夫はそれを写真に撮り、家族LINEに載せた。そして、

「札幌のつもりが宇宙行きだった」

と書いていた。子供たち、スターウォーズを知ってるか?

 私はトイレに行き、夫もどこかへ行った。トイレから出て、外の飛行機の写真を撮ろうかと思い、人がなるべく写り込まない場所はないかと探していたら、夫が私の目の前に現れ、

「見えない?どれだけ見えないのか知っておかないと、もしもの時に困るよ。」

と言った。どういう事かと思ったら、窓際の席に座って、私の方に手を振っていたそうなのだ。しかし、私が全然気づかないで歩いて行ってしまうから、見えていないのだと思ったらしい。いや、見えていなかったよ、もちろん。けれども、探していなかったから見逃したのだと思う。夫は黄色いでかいスキーウエアを着ていて、探せばとても目立つから。今、黄色い機体を見ていたから、全然視野に入って来なかったのだ。すまぬ。

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