第45話

 無事昼食も終わって展示場に向かう。

 公園で食べるサンドウィッチは大変美味しかったが、白帆の食べる量には驚いた。俺の1.5倍は食べていたんじゃないだろうか。


 この細い身体のどこに入ってんだあのパンたちは。


「やだ、そんなに見ないでください。かわいいのはわかりますけど」


「無敵じゃんお前」


「苦手なものもありますよ!……たまねぎとか」


 彼女は顔を背ける。

 確かにこの前の飲み会の時もカツオのたたきの下に敷かれている生たまねぎに手をつけてなかったっけ。


「あんなに美味しいのに」


 あの辛さのなかにある確かな甘み、シャキッとした食感。


「そう思ってる人が沢山食べてくれると私は幸せです」


 つーんと取り付く島もない。


 相当嫌いだなこれは。

 すんっと表情を消した白帆を見て思う。


 エレベーターから出ると広々とした空間にエリアが区切られ、モデルルームのようになっていた。


 オフィス展示だと聞いていたが、ソファやらベッドもあって壮観だ。

 いいな……うちは割とお堅い人が多いからフリーアドレスとかにはまだまだ移行しないんだろうな。


「これいいですね」


 白帆がクッション型の椅子にぼふんと座る。

 人がダメになりそうな形をしているが、人間工学に基づいた設計らしい。


 試しに自分も座ってみると、確かに腰にフィットする……これなら無限に残業しても耐えるだろうか。


「こんなとこまで来て残業のこと考えるのやめてください……」


「顔に出てたか?」


「それはもう。これならイけるなって顔してました」


 どんな顔だよ。


 進んでいくと不思議な形の机やお洒落な照明なんかもある。

 まるで穴あきチーズのように、ネズミが齧ったかのように半円がぽっこりと空いた机を見て白帆が呟く。


「これ書類とかどこに置くんでしょう……」


「こちら、意外と下に空間があるんです。結構人気ですよ」


 後ろから凛とした声が飛んでくる。

 振り返れば、スーツを着た美人がにこやかに笑っていた。


「初めまして。わたくし、秋津と申します。本日お打ち合わせにお越しいただいた白帆様でお間違いないでしょうか」




◎◎◎

誰なんだお前はと思った方、よかったら私の別作品を読んでくださいね。

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