第36話
金曜日、それは良くも悪くも週の最終日。
間に合わない仕事は来週へ、間に合う仕事ですらも来週に押しやって、何とかして休日になだれ込むのだ。
「今日飲み会やるらしいんだが、お前も来るか?」
自席で昼食を食べていると、突如声をかけられる。
「えぇ……もっと早く言えよ」
そんな突発的に飲み会って生えてくるのか……。確かに昔は残業していたら、残ってるメンバーでってこともあったが、最近はめっきり無くなってしまったな。
「メンツは?」
「未定、来そうな人間は他の課でも声掛けてるっぽい」
うーん、きな臭いな。首謀者は誰だ。
俺に声がかかるってことは企画した人間も限られてきそうだが。
「遠峰さんもどう?」
同僚が果敢に声をかける。
「え、私も行っていいんでしょうか」
「もちろんもちろん!他の課の人と仲良くなる機会だしぜひおいでよ!」
うきうきと腕を振る同僚。
まぁ確かに、知らない人と仕事するより「あぁあの時の」ってなる方がやりやすいに決まってる。
遠峰さんはこちらをちらっと見る。
はぁ……まぁそうだよな。
「よし、じゃあ俺も行こうかな。せっかく金曜日だし」
「では私も!よろしくお願いします!」
「よし、んじゃあメンバーに入れとく!場所とかは後でチャットするわ!」
同僚はそう言いながら外へと消えていった。あいつ煙草吸いに行ったな?
「遠峰さん、こういうのは定期的に開催されるから本当に無理しなくていいからね……」
「大丈夫です、ありがとうございます。来て下さるんですね」
彼女は目を瞬かせる。
「そりゃあんな顔されたら」
「ふふ、あんな顔しておいて良かったです」
昼休みも終わりの時間。
ぬるっと仕事しようと思っていたが、新人を1人で飲み会に放り込む訳にもいかないし頑張りますか。
「あぁ〜〜!」
ぐっと腕を伸ばす。
時刻は17時と30分、なんとか仕事を終わらせた。金曜日に緊急対応の電話とかするんじゃねぇよ。
おかげで来週はちょっとマシだろうか。時間があるならそろそろ自炊もしたくなってくる頃。ベランダで飲むためのつまみとか作ろう。
「それじゃ、行こっか」
PCを閉じて遠峰さんに声をかける。
緊急対応も手伝ってくれたからか、彼女も少しお疲れ気味だ。
「土日はしっかり休んでね」
「はい……今日はぐっすり眠れそうです」
2人で社員証をゲートにかざして外に出る。
さすがにもうジャケットなしだと寒いだろうか。
どこか浮かれて雰囲気の繁華街を通って駅方面のビルに向かう。
「会社の人と飲み会なんてあんまり行ったことないので楽しみです」
ふんす、と息を吐いて遠峰さんは足を進める。気合十分だな。
「結構お酒飲むの?」
「人並みです!すぐ酔っちゃうのでゆっくりペースで……」
クールビューティな感じだから強いのをサクッと飲むのかと思ったら違ったみたいだ。
「ま、他に人いるから大丈夫だろうけど程々にね」
目的地が見えてくる。
1階に数人集まっているが、あれかな。
「うぃっす、お疲れい」
顔見知りに声をかけると輪に入れてくれる。
「おつかれ〜今日は珍しいゲストが多いな」
目線を追うと、そこにいたのはやはりと言うべきか、白帆 羊だった。
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