第23話
撮影も順調に進んでいく中、突如暗雲が立ち込める。いや、仕事にではなくリアルに。
「うわ、これ荒れるぞこの後」
白帆は額に手を当てて顔を真っ青にしている。
言っている間にぽつぽつと大粒の滴が空から降ってくる。
朝イチの快晴とは打って変わって周りが暗くなった。
ひとまず俺は走って撮影現場に近付いてディレクターやモデルのマネージャーと話す。
「えぇ、えぇ。今日の撮影は難しそうですね」
キリッとしたつり目のマネージャーさんがスマホのスケジュール帳をすごい速さでスクロールしている。
「スタッフのみなさんは予定いかがです?」
一旦全員のスケジュールを擦り合わせる。
まぁもともと先方は予備日も想定していただろうし大丈夫だろ。
スタッフさん達も概ね合意が取れたようで、ぞろぞろとホテルへと向かっていく。
いやぁ全員分の宿泊想定して予約しといてよかった。撮影はリスケになりがちだし、明日を逃すと面倒なことになるだろう。
後ろから白帆がとてとてと駆けてくる。
どことなく足取りは重い。
「先輩……私……スタッフさんたちの分、宿泊手配の申請出してないですよね、、、どうしよう、、みんな泊まる場所ない、、」
俺のスーツの裾を掴んでぷるぷる震えている。
目にはうっすらと水の膜が張っている。
こいつ、泣きそうな顔までかわいいのずるくねぇか。
「いや、取ってるが……あたりまえだろ」
彼女の指を丁寧に剥がしていく。
「というか撮影とか一日で終わると思ってねぇよ。まぁ会社のコネをあれやこれや使ったり、別の予定ぶつけたりできるからキャンセルになっても大丈夫だぞ」
まぁ申請出てないのに勝手に動いて本人に言ってない俺も相当だが。
彼女は口をあんぐり開けている。
おい、雨を飲む気かよ。
「言ってなかったのはすまんかった、熱やらで忘れてたわ」
「なんで、」
「いやなんでって。普通撮影だったら予備日設定するだろうが。ちゃんと先方とのチャットログ見て日程も確認したからな」
むぎゅっと柔らかい感触。
こいつ意外と……いや、なんでもない。
腕に回された腕は俺の腰をぎゅうぎゅう締め付けてくる。
「助かりました〜〜〜!!」
顔をぐりぐり押し当てながら俺のスーツに向かって叫んでいる。
「どうなるかと、、、気合い入れたお仕事だったのに皆さんにご迷惑おかけするところでした……」
「その皆さんの中に俺が入ってないことに驚きを隠せないんだが」
ひっついた後輩を引きずりながら俺もホテルの方へ向かう。
しかし残念なことに、この仕事の顛末には落とし穴があるのだ。
未だぐすぐす言ってる後輩に伝えねばならない。
「実はそんなにうまい話は無くてだな」
雨に濡れない場所まで来たところで白帆をひっぺがす。
「待ってください、メイク崩れてるので顔見ないでください」
ぷいっと後ろを向かれてしまう。
こいつ、さっきまでくっついてたくせに……!
「んで話の続きなんだが、スタッフさんの部屋でほとんど空きを埋めてしまって、」
雨は降り止まない。
仕事のトラブルなら「致し方なし」って感じで対応できるんだが、こういうのは伝えにくいんだよなぁ。
「俺たちの部屋は1つしかないんよ、お前が使ってく……」
言葉を言い終わらないうちに白帆はガバッと音を立ててこちらを振り返る。
持ち上がった口の端、目には怪しい光が灯っていた。
◎◎◎
こんにちは、七転と申します。キリのいいところではありませんが、ご挨拶を。
はじめましての方ははじめまして、別作品から私のことを知ってくださった方はお久しぶりです。
皆さん5月病はいかがでしょうか。
私は残業の星から逃れられないようで、どんなに部署異動や転職しても無限に働いています。
定時……?知らない言葉ですね……。
実はこの作品以外にも2作品連載してますので、社会人ラブコメに飢えている方はよければ探してみてください。
カクヨムの海に放流しておきました。
私自身も他の方の小説を読んでいるんですが、毎日更新されている方のバイタリティにはびっくりします……皆さんもよかったら好きな作品には♡と☆を付けてあげてくださいね。
ほんとにモチベーションになるんです。今日は書くの厳しいなって時でも、通知見てやる気出したりするので。
それではまたキリのいいお話の後書きでお会いしましょう。
後輩キャラはいいぞ。
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