第22話
ジリジリと太陽が肌を灼いていく。気温は30℃、視界に映るのは真っ白の砂浜とキラキラと瞬く青い海。
なんで俺はこんなところでジャケット着て立っているんだ……。
あの顔のいい後輩の罠で連れてこられた出張、ホテルや交通系、物品の準備だけすれば仕事は終わりかと思いきや、現場にまで足を運ぶことになってしまった。
こんなことならTシャツや短パンでも持ってくればよかった。
くそ、今頃会社では仕事が溜まり続けているんだろうな。
「先輩先輩〜!お疲れ様です!」
「おう、お疲れ……暑くね?」
「暑いです!でも夏って感じがしてよくないですか?」
陽キャ、すごい。
俺は一刻も早くクーラーの効いた部屋でゆっくりしたいよ。
「嫌そうな顔してますけど、この時間にもお給料発生してますからね?」
真っ黒のTシャツをパタパタしながら彼女は正論パンチをかましてくる。
シャツの裾が揺れて真っ白のお腹が顔をのぞかせる。
「やだ、先輩見ないでくださいよ〜」
唇を尖らせて甘い声を出すと、うりうりと腕を押し付けてくる、うざい。
「これは不可抗力だろうが、見せつけてきやがって」
「というか先輩スーツって暑くないです?うわ、中あっつ。サウナじゃないですか」
押し付けてきた腕をそのままジャケットの中に滑り込ませると脇腹をさすられる。
「ただでさえ暑いから離れてくれ〜」
俺たちがごちゃごちゃしている間にも、モデルさんの撮影準備が着々と進んでいく。
こういうのが見れるのは現場のいいところだよな。デスクに座ってPCをカタカタしているだけじゃわからないことも沢山ある。
うわぁ屋外で機材設置するの大変だろうな……下が砂浜だとなおさら。
あんな重いもの持って車からここまで来るのも大変だったろうに。
ようやく準備が整ったのか、モデルさんの登場だ。スタイル良……!ほんとに同じ人間か?
まだ肌の露出面積は少ないとはいえ、顔の小ささや脚の長さから自分の体型と見比べて悲しくなってくる。
「せーんぱい、あんまじろじろ見ないでくださいよ」
隣の後輩から腕が伸びてくる。
「わ、わるい」
そのまま頬をむぎゅっと掴まれると強制的に白帆の方に顔を向けられる。
整った唇が上へと持ち上げられる。
目にはこちらをからかうような、それでいてどこか心配そうな光が揺れていた。
「私だけ見てればいいんですよ、せっかく2人だけの出張なんですから」
暑いのは夏のせいだけじゃないらしい。
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