第18話

「それで、どっちが似合うと思いますか?」


 目の前に差し出されたのは黒のシックなビキニと淡いピンクのワンピースタイプの水着だった。


「流石に異性の後輩の水着を選ぶのはなぁ……セクハラじゃない?」


「私がいいって言ってるんですからいいんですよ!」


 鬼気迫る白帆にたじろいでしまう。

 俺たち仕事で海に行くんだよな……?


「や、見る機会ないだろうし自分の好きな方買いな」


「じゃあ見せたげるから選んでください」


「そんな押し売りあってたまるかよ」


 そのままだと埒が明かないと彼女は俺の手を引いて店の奥へとずんずん進んでいく。


「まったく、私も傷ついちゃいますよ?水着姿見たくないとか言われたら」


「え、じゃあもっとガツガツいけばよかったのか?なぁ白帆ちゃん、水着見せてよ」


「薄っぺらい先輩は解釈不一致なので、二度とやらないでください。あとそこまでするなら下の名前呼んでくださいよ」


「ごめん……」


 なんでこんなに怒られてんだ俺は。そんなに言わなくてもいいじゃん。

 水着俺のお金で買うからもう出張も許してくれねぇかな。


「じゃあ先輩はここで待機!」


 到着したのは試着室の前。

 反応する間も無く白帆はカーテンの奥へと消えていった。


 中から聴こえる衣擦れとぱちっぱちっという音。これがんの音かは想像しちゃいけないんだろうなぁ。


「先輩、いますか〜?」


「はいはいいるよ」


「よかった、薄情な先輩のことだから目を離した隙に帰っちゃうんじゃないかと」


「俺のことツチノコかなんかだと思ってる?いいからはよ着替えてこい」


「そーんなに私の水着が見たいだなんて〜、最初から言ってくださいよ〜」


 言うが早いかシャッとカーテンを開けると、黒のビキニを着た白帆が現れた。

 キュッとしまったくびれや健康的な太ももが惜しげも無く晒されている。


 自慢げな顔に突っ込む余裕が無いほど魅力的で。


 これは……ちょっとあれだな、あれ。言葉にはしないが。

 すぐにカーテンを閉めると、恥知らずな後輩を奥に押し込む。


「それはやばい、上着てくれ、たのむ」


 頬に熱が上がっていくのがわかる。


「え〜〜〜かわいいじゃないですかこの水着!」


 自分の胸元を見ながら彼女は口を尖らせる。


「まぁ先輩の反応見れたしいっかぁ」


 そう言うと彼女は背中に手を回した。今脱ぐつもりか。


「まてまて、俺が出てからにしてくれ」


「へへ、今叫んだら先輩は社会的に終わりますね……ふふふ」


 悪い顔をしながら彼女は笑う。


「怖ぇ、計画的犯行じゃねぇか」


「生殺与奪の権を……」


「それ以上はいけない」


「まだ裸を見せる勇気は無いので、今日のところは我慢してくださいね!」


 世迷言を堂々と口にしながら俺の背中を押すと、彼女はカーテンを閉めたのだった。

 

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