第4話 ドキドキ


油断したと思う。

私は思いながら病院に運ばれた先輩からの連絡で直ぐに家を飛び出して行った。

それから私は先輩の腕、右腕のギプス姿を見て涙を浮かべる。


「まさかこうなるとはな。油断したよ」

「先輩。明るすぎます」

「...菅原?」


病院の外だが私は怒り狂って絶叫した。

「許せませんよ!こんなの!」という感じでだ。

私は心底からはらわたが煮え繰り返りそうだ。

あり得ないしクソだ。


「...気持ちは分からなくはないな。一応、奴らは捕まったから。まあ...アイツ。菅宮は...任意同行だけど」

「菅宮がこれを仕組んだんですよね。だったら菅宮に数多くの責任があります!」

「アイツは仕組んだ訳じゃないとは思う。アイツの言葉とかが気になる。だけどアイツにも責任はあるよな」


「無いとは言わせませんよ。絶対にアイツも関係があります!」と私は怒り混じりに言う。

それから私は居ると。

「まあ取り敢えず落ち着こう。それから対応を考えよう」と先輩が言った。


「それにあまり騒ぐとそれこそ警察に捕まる。俺らがな」

「しかし私は...私は」

「気持ちは分かる。俺は...甘いし。今回は非道だったよ。だけど俺らが今怒り狂ってもどうしようもない。だから一旦落ち着こう」


そう言われて私は考え込み。

周りを見る。

通行人は何事かという感じで集まって来ていた。

所謂、野次馬の様になりそうだった。

私はそれを見てから「はい」と言いながら落ち着きを取り戻した。


「先輩。これから帰りますか?」

「ああ。この身では動けないだろうしな」

「じゃあ先輩の家に行って良いですか」

「来てどうするんだ?」

「先輩がやれなかったお世話をします」


私は野次馬を見ながら先輩を見る。

先輩は「...有難いがお前がそんな事をする必要性は無いんだが」と言う。

私は「これは私がしたいからするんです。だから気にしないで下さい」と笑みを浮かべた。


「お前がしたいから?何で?」

「何でも良いじゃないですか。先輩。あはは」

「...???」


訳が分からない、という様な顔の先輩。

私はその顔を見ながら柔和になる。

それから「私は二度と貴方を不幸にはさせませんから」と言う。

そして歯を食いしばった。


「...有難いな。なら来てもらっても良いか?」

「ですです!じゃあ早速行きましょう!」


正直確実に許す事は出来ないが。

私が壊れない様にしないと。

怒りの行動は失敗を招くだろう。

そう考えながら私は先輩と一緒に先輩の家にとにかくと向かった。



先輩の家に来るのは久々な感じがする。

忙しかったのもある。

テストが忙しかったのも。

だからこそ曖昧になってしまった。


「でも恥ずかしいな。何か」

「何がですか?先輩」

「いや。こうして家に女子を呼ぶのがな。そして今日はお世話の為だし」

「確かにですね。でも私は恥ずかしくないです。だって先輩の家です。お相手先輩ですし」


そう言いながら私は先輩の家に入った。

それから早速と腕まくりをする。

先輩は「じゃあ俺はこっちを」と言い出した。

私は慌てて止める。


「先輩!洗濯物は私がやります!掃除も!」

「え?し、しかし」

「仮にも骨折している方にそんな事はさせられません!」

「しかし...」

「良いから!」


私は鬼気迫る顔で大慌てで止める。

それから先輩は「わ、分かりました」と目をパチクリしてから全てを止める。

私は「全く」と怒りながら家事をした。

その際にハッとする。

私、通い妻みたいじゃ、という感じで、だ。


「私って奥さんに見えます?」

「!?...い、いきなりどうした」

「い、いえ。ふとした疑問です」

「いや...い、いや」

「...」


マズイ。

ニヤニヤが止まらない。

赤くなってしまう。

奥さんに見えるのか?私は。

何だかそれだけで嬉しく思える。

私は先輩を見る。


「...」

「...」


正直。

何も言えなくなる。

マズイ。

本当に嬉しいと共に手が動かなくなる。


「...ね。先輩」

「...菅原?」

「わ、私が奥さんだったら...先輩はどう対応しますか?」

「お、お前が奥さん...ってどういう意味だ」


私もよく分からない。

何故こんな事を言うのか。

そう考えながら私は赤くなったまま先輩を見つめる。

先輩は私を見てから「正直、よく分からない。だけどお前が奥さんだとするなら。生活は上手くいきそうな気はする」と答えた。

私はまさかの言葉に真っ赤になってから「そうですか」と返事をする。


「えっと。せ、洗濯。お洗濯してきます...」

「あ、ああ」

「...」

「大丈夫か。菅原」


触ってくる先輩。

私はまさかの事に肩がビクッとなった。

それから先輩の手を退ける。

「い、今は触らないで...」と言いながら、だ。


「あ、ああ...」

「すいません」


私は掌を見る先輩を残し。

そのままその場を後にした。

これはマズイ。

何でいつも以上にドキドキする。

訳が分からない。

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