第25話 新展開!?

 深閑とした住宅街。


 麗しい月明かりが、妖艶な雰囲気を醸し出す。


 俺の前にいるのは――有澄さんでも鞠亜でもなく――、あでやかな一人の女性。


 その人は、優しく俺に微笑む。


 こんな夜に、色気ある大人なお姉さんと二人きり。


 どうしてこうなったんだ……?!



 ――時はお祭りの帰り道にさかのぼる。





 日は暮れ、暗くなった帰り道。閑静な住宅街は、しんと静まっていた。


 少し遅い時間になってしまったので、俺は有澄さんを家まで送ることにした。


 夜分に有澄さんみたいな可愛い子を一人で帰すのは、流石に心配だ。


「い……一之進君、わざわざ家まで送ってくれてありがとうね」


「いや、全然大丈夫だよ……あ、有澄さん」


 ……つい先程からお互いを名前呼びにすることになったのだが、まだまだ慣れるには時間がかかるかもしれない。


 有澄さんは赤面しているが、恐らく俺も人のことを言えないほどに顔が真っ赤だ。


「うちここだから……じゃ、じゃあね!」


「うん、またね!」


 有澄さんはインターホンを押し、気恥ずかしさが限界に達したのだろうか、有澄さんの家のドアへ小走りで駆けていく。


 ――すると、有澄さんがドアに到達する少し前にドアが開いた。


 そして家の中からは、黒のロングワンピースを着た綺麗な女性が出てくる。


 茶色がかった長い髪を後ろで一つに纏め、お淑やかながらどこか色気のある笑みで有澄さんを迎える。

 年齢はおそらく大学生くらいだろうか。


 あれ、有澄さんって三姉妹だったのか。全然知らなかったな。


 ぼーっと二人の姿を見つめていると――、お姉さんと目が合った。


 軽く会釈してみるが、お姉さんは有澄さんに何か一言告げてからこちらに向かってきた。


 歩いている姿からも、優美な雰囲気が感じられる。


 ……有澄さんたちのお姉さんが俺に何か用があるのだろうか? 

 というかあんな綺麗な人と上手く話す自信ないんだけど……緊張してきたな。


 お姉さんは俺の前で立ち止まった。爽やかな香りが鼻孔をくすぐる。


「あなたが、一之進くんかしら?」


「は、はい! そうです!」


「いつも話は聞いているわ。ちょっとお話してみたいと思ってたの」


「そ、そうなんですか」


「うん。どんな子なのかな、ってずっと気になってた」


 柔らかい笑顔を浮かべながら言う。


 お淑やかな有澄さんと、アクティブな鞠亜の雰囲気を合わせたような印象だな。やっぱ姉妹なだけあって二人ともとよく似ている。


「ちょっと暑いし、おばさんがアイスでも買ってあげましょうか」


 おばさん……?


「いえ、お姉さんと初めて会ったばかりなのに、そんな申し訳ないです」


「あらあら、口がうまいのね」


「……え?」


「そんな遠慮しなくていいのよ。いつもたちがお世話になっているんだから」


 ……ムスメ?


「え、お姉さんじゃないんですか……?」


 目の前の女性は笑いながら、


「違うわよ。私は有澄と鞠亜の母の、及川文佳あやかです。ちょっとお話しない?」


 言い放った。





――――――――――――――――――――――――――――



 次話は明日か明後日に投稿します!(これと次話を纏めて一話として投稿しようと思ったのですが、文字数が増えすぎてしまったので……)


 物語もそろそろ終盤……だと思います!

 最後までお楽しみいただけると嬉しいです!

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