第21話 ロリ巨乳
夏真っ盛りの強い日差しが、コンクリートに刺さる。
外にいるだけで頭がぼーっとするような暑さだ。
俺は夏休み序盤のある日、海に来ていた。
潮風がほんのりと香る海への舗道を歩き、
「楽しみですね、一之進先輩!」
隣には鞠亜がいる。
「お、おう」
俺は先月、今隣にいる鞠亜と、その姉の有澄さん告白された。
そして、今二人に返事を待ってもらっている。
先日二人からは、『夏休みが終わるまで』に、返事をしてほしいと言われた。
そんなに長い間の時間を貰っていいのかと思ったが、二人は一貫して「じっくり考えてほしい」と言ってくれている。
だが、そのかわりとして有澄さんと鞠亜、それぞれ一回ずつ一緒にデートに行ってほしい、というお願いをされた。
……確実に、俺たちの関係は今までとは違うものになっている。
「どうしたんですか、一之進先輩!」
「いや、なんでもない」
どこか落ち着かない気持ちが顔に出てしまったのか、鞠亜は笑顔で俺の顔を覗く。
が、鞠亜もいつも通りに見えてどこかいつもと違う雰囲気を纏っているような気がした。
生暖かい潮風が、少しすっぱく感じる。
〇
いやー、暑い暑い。
俺は海の家の更衣室の前に置いてあったベンチに腰掛ける。
今日はそのまま服の上に水着を履いてきたので、着替えはほぼ一瞬で終わった。
いたってシンプルな黒の水着は、普段海なんて行かないので三日前にアマゾンで買ったやつだ。星四点五だったので多分変なデザインとかではないはずである。
そして今、鞠亜の着替えを待っている。
鞠亜はどんな水着を着てくるのだろうか。
暑い中だが、やけに頭が回る。
学校指定の水着だろうか。そ、それとも……?
……そわそわするな――
「一之進先輩!」
「……はっ!」
想像の世界に迷い込んでいた俺を、鞠亜の声が現世へと連れ戻す。
「……ど、どうですか……?」
鞠亜は少し恥ずかしそうな上目遣いで言った。
鞠亜の水着は学校のものではなくセパレートタイプで……水玉模様の胸元に大きく強調された双丘が有無を言わせずに目に入ってくる。
ろ、露出多くないか!? 高一が着るにしては刺激強すぎるって!
胸の成長は遥かにずば抜けているが、身体は小さな鞠亜からは……もはや危険な魅力を放っていた。
「……い、一之進先輩?」
「あ、いや、めちゃくちゃ似合ってるよ! ほんとやばいぐらい!」
……鞠亜に悩殺されてしまっていた。
正直、どこのアイドルよりもかわいい姿が今目の前にある。
「ほ、ほんとですか! よかった!」
鞠亜の不安そうだった顔が一瞬で笑顔に変わる。
胸を張ると鞠亜の胸が悲鳴を上げるかのように動く。
「……一之進先輩、そんなに じーっと見られると恥ずかしいです」
「いや、まじごめん!」
つい胸をガン見してしまった!
慌てて謝る俺に、鞠亜は、
「い、一之進先輩がわたしを選んでくれたら、す、好きにしていいですよ」
大きな胸を下から包み込むようにして持ち、言い放った。
す、好きにって!?
鞠亜の想像を超える言葉に、自分でも顔が赤くなってしまっているだろうことが分かった。
が、そう言った鞠亜も顔が紅潮していた。
ドキドキと、心臓の音が聞こえてしまいそうな距離感。
今日が始まったばかりなのに、もうこんなに胸が高鳴ってしまっている。
「な、なんて! 行きましょうか!」
「お、おう! 暑いしな!」
二人、何かをごまかすように言った。
この前に遊園地にいった頃と比べれば、俺と鞠亜の距離は遥かに縮まっているはずだが、どこかぎこちない空気なのは二人の関係がどう変わっているからなのだろうか。
「じ、冗談で言ったわけじゃないですからね……!」
「――っ!」
今日は心臓が何個あっても持ちそうにない。
〇
「意外と人多いですねー」
「そうだな。まあ夏だしな」
海へ歩く途中、鞠亜と話しながらも……めっちゃ視線を感じる!
「やばい、かわいすぎる……」
「あれ、合法なのか……?」
「ロリ巨乳だと……!」
おい〇すぞこいつら!
俺も人のことを全くもって言えないが、鞠亜をいやらしい目で見るんじゃない!
「一之進先輩、見えてきましたよ!」
幸い、モブたちの戯言は鞠亜の耳に入っていなかったようだ。
そして、目の前には太陽の光をキラキラと光る、海が広がる。
「おー、迫力あるな」
「はい! 行きましょう!」
そう言って鞠亜は、俺の手を引き走り出した。
「お、ちょっ!」
慌てて俺はついていく。
なんかまるでアク〇リアスのCMみたいじゃないか!
鞠亜の柔らかい手の感覚が腕に見えない重みを加えて残る。
俺と鞠亜はそのままの勢いで海へと入水した。
「――わ、思ったよりもぬるいな」
なんとなく海の水は冷たい印象があったけど、まあ真夏だしな。
意外と入りやすい水温のためか、周りにも海に入っている人が多いようだ。
「お、なんかちっちゃい魚みたいなのいるぞ――」
俺は鞠亜に話しかけるが――、鞠亜は一瞬だけ、少しぼーっとしたような呆けた顔をしていた。
「鞠亜、大丈夫か」
俺は鞠亜の太ももあたりに少し水をかけて言った。
「――あ、一之進先輩、やりましたね! お返しです!」
鞠亜は俺の掛けた水に反応し、俺に水を掛けてきた。
「わっ! ……やったな?」
鞠亜はさっきの呆けた顔に笑顔を上書きしたかのように、いつもの笑顔で言う。
そこからしばらく、鞠亜と水を掛け合って遊んだり、ビーチでゆっくりしたりして楽しい時間を過ごした。
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