第37話 嵐の前の静けさ
三学期が始まった。
生徒会は二年生に引き継ぎをし、来期の生徒会長にカイン殿下が就任した。
アルフォンス殿下は王宮にて謹慎、卒業までは王族としての勉強をやり直しているとカイン殿下は言っていた。
クララ嬢は変わらず学園に来ているが、年末のパーティーでの行為により周囲からは人が離れてしまっているらしい。
私たちは卒業を控えてそれぞれ進む道への準備に慌ただしく過ごしている。
「アリアは卒業したらどうするの?」
いつもの中庭に皆でランチを楽しみながらアリアに聞くと、少し考えてアリアが口を開いた。
「神聖国に行こうかと思うんだ、やっぱり聖女になりたいし王都の神殿から推薦状を出してくれることになったんだよね」
「あら、おめでとう、でも神聖国まで随分と遠いのではなくて?」
「うん、神殿からは一応護衛を一人付けてくれるらしいんだけど」
「そっか、そこまで話は進んでるのね」
アリアはこくりと頷いてハインさんを見た。
「ハインさまはどうするんですか?」
「二学期までは実家に帰ってハーレン伯爵家の傭兵団に入るつもりでいたんだが、アリア嬢は神聖国に行くんだよな」
「そうですね」
「その旅、一緒に行くのはダメだろうか」
「え?」
「俺はずっとハーレン伯爵領にいて王都も学園しか知らない、強くなるには外を知るべきだと思ってるんだ、それに神聖国の聖騎士隊は相当な実力者揃いと聞いている、だからアリア嬢の護衛の一人に加えてはもらえないだろうか」
いつになく真顔のハインにアリアも気圧されている。
「わ、私の一存ではなんとも……」
「ならば、神殿に俺も話を通しに行く」
「は、はぁ」
一人盛り上がっているハインに私たちは苦笑するだけだった。
卒業が近付くと一番忙しいのは現生徒会と卒業パーティーの実行委員たち。
時々カイン殿下を含む後輩たちが前年度の話を聞きに来たりするぐらいで私とユーリさまは卒業後のユーリさまの爵位継承式と私たちの結婚式、それに披露目のパーティーの準備に追われている。
爵位継承式は現ランドール公爵であるユーリさまのお父さまからランドール侯爵領の領都で行われる、そこでの簡単なお祝いの夜会はランドール家が開催するため私たちにすることはない、同時に婚姻の手続きを済ませてすぐにユーリさまが領主となるブロッサム領に入る。
夏前に合わせて結婚式と披露目のパーティーを予定しているため、王都で出来ることは卒業までに済ませておかなければならない。
ユーリさまは卒業の一カ月前には王宮にて爵位継承の儀式を終えた。
これでユーリさまはユリウス•ランドールではなくユリウス•ランドール•ブロッサム伯爵となった。
ただ、便宜上ユーリさまは卒業するまでユリウス•ランドールとして過ごすらしい。
そして私たちは卒業の日を迎えた。
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