第32話 闘技大会二日目決勝
ガレインさまの一試合目以外はすんなりと競技が進み、対戦女子の部はレオナさまの二連覇で幕を閉じた。
魔術技能はユーリさまが優勝、アリアは惜しくも三位となった。
「ユーリさま、おめでとうございます」
「うん、勝ててよかったよ」
「アリアも三位おめでとう」
「ありがとうございます、でもちょっと悔しいかな」
和気藹々と健闘を労いながら準決勝を見守るため、会場に入る。
準決勝を勝ち進めば決勝はガレインさまとハインさんの戦いになる。
共に気合いを入れて臨んだ準決勝はガレインさまが難なく決勝へ、ハインさんは苦戦を強いられるもなんとか勝ち上がることができた。
「二人ともおめでとう!」
「ハイン、決勝までゆっくり休憩して」
ユーリさまが二人に水を差し出して労う。
私たちも決勝に向け休息を取る二人に絞ったタオルを渡したりしながら二人を労っている。
「ガレインさんは王立騎士団に入団が決まってるんですよね」
「ああ、夏に内定を貰った」
「じゃあ今日は内定ぶん取るつもりでいきますね」
「おう!楽しみにしてる!」
二人は爽やかに笑いながら握手をしている、その姿を見たカイン殿下が小さく「暑苦しい」とぼやいたのは聞かなかった事にした。
「イルマ嬢は、ハインに勝って欲しい?」
控室からガレインさまとハインさんを送り出し観客席に向かう通路でカイン殿下がイルマさんに問いかけた。
「ずっと見て来てるので、勝でたらいいなとは思うんですが」
「おや?含みがあるね」
「見て来ただけにガレインさまとの差も見えてしまっているので」
イルマさんが困ったように笑う、カイン殿下もまた苦笑していた。
「ごめんね、意地悪なこと聞いて」
「いえ……」
「ちょっとした嫉妬だから」
「ふぇ?」
いや、わかるやろ。
イルマさん、カイン殿下絡むとたまにポンコツになる気がするねん。
優勝決定戦の会場はかなりの熱気に溢れていた。
一方は三連覇がかかる騎士団への入団も内定したガレインさま、一方はまさかの大番狂せで昨年準決勝に届かなかった男爵家のハインさん。
生え抜きのエリートとここまで快進撃を繰り広げた無名の生徒とあって観客席は予想合戦に忙しそうだ。
生徒同士であれば、ハインさんの力量も知ってはいても外部では矢張り三連覇がかかるガレインさまの知名度が高い。
「どきどきしてきました」
アリアの言葉に私たちも頷く。
入場した二人が互いに剣を構えて向かい合った。
「はじめ!」
ガンッ!ガンッ!ガンッ!
金属がぶち当たる重い音が三度響いた。
地面を蹴ったハインさんが低い姿勢から切り上げるのをガレインさまが躱す。
躱した先から二度三度と切りつけるのを片手を地面に付きハインさんが身体の向きを変えてガレインさまの脇腹を蹴り上げて距離を取る。
間髪入れずに低い姿勢を維持したハインさまが切り掛かるのをガレインさまが剣で受け止める。
息もつかせない攻防に観客席は静まり返っている。
決勝まで危なげなく勝ち進んできたガレインさまがここへ来て初めて苦戦をし始めていた。
一撃一撃はガレインさまが重いようだが、ハインさんは手数と何よりその速さでガレインさまを押している。
少しずつだがガレインさまに当たる攻撃が増えて来た。
「凄いな」
「やっぱりガレインは強いね」
「ハインも頑張りましたが」
レオナさまとカイン殿下とイルマさんがそう話した後直ぐに風向きが変わった。
押していたはずのハインさんが肩で息をしている、対するガレインさまはまだ体力に余力がかなりある様子。
「次だね」
「はい」
一瞬の静寂の後、息を整えたハインさんが上段に構えて飛び上がりました。
それを見たガレインさまが真正面からハインさんの剣を受け弾き飛ばすと二撃目を放つ。
ゴッという鈍い音と共に吹き飛んだハインさんが片手をあげて「降参」と合図を送ります。
瞬間、会場から割れんばかりの歓声が上がり二人に称賛の声が送られた。
「二人を迎えに行こう」
ユーリさまが促して私たちは控室に向かいました。
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