第31話 闘技大会二日目
闘技大会二日目は武術対戦と魔術技能。
武術対戦が朝から行われ、準決勝前に休憩が入る。
その間に魔術技能が行われる。
「ガレインがアルフォンス殿下の対戦相手か」
「カイン殿下からお許しも出てるからサクッと終わらせるさ」
「多少の見せ場を作ってあげたりは」
「いらないでしょ」
気遣うレオナさまを止めたのはカイン殿下だった。
王族の観覧に先程まで挨拶に出向いていたカイン殿下が不愉快さを隠しもせず、ガレインさまに「君なら一分も要らないでしょ」と言い出したため、さしものガレインさまも苦笑いをしていた。
直ぐに最初の試合が行われる。
ハインさんの出番だ。
「頑張ってください!」
アリアが声をかけて背中を叩いて見送る。
「っと、ハハありがとう」
ヒラヒラと手を後ろ手に振りながら第一試合に臨む。
相手はアルフォンス殿下の側近の一人だ。
体格に恵まれた重い一撃をヒラっと躱し打ち合いになることもなく、後ろを取って首筋に剣の柄を当てて気絶させると、軽く礼をして戻る。
その隣の会場ではレオナさまが危なげなく一勝目を挙げていた。
そうしてガレインさまの出番がやってきた。
控室から出たガレインさまに一人の女生徒が駆け寄る。
「あなた!アルさまの取り巻きなんだから!ちゃんと負けなさいよ!」
不敬でしかない。
見送りに来ていた私たちは開いた口が塞がらなかった。
「ちょっと!無視しないでよ!聞いてるの?」
ドンっと女生徒がガレインさまを突き飛ばしたのを見て慌ててカイン殿下が審判の教師を連れてきた。
教師に連れて行かれるも女生徒は大声で何かを叫んでいたが、ガレインさまが大きなため息を吐いて会場に出てしまった。
「今の、クララ嬢だよ」
「ガレインさまは大丈夫かしら」
「ガレインなら大丈夫よ、手ごたえない相手だしね」
婚約者であるガレインさまの試合直前に気を散らすような真似をしたクララ嬢をレオナさまも少々お怒りの様子。
「ガレイン!」
レオナさまがガレインさまの背中に声をかける、チラッと後ろを振り返ったガレインさまにレオナさまが立てた親指を下に向けた、ガレインさまが了解の合図をレオナさまに送る。
あかん、レオナさまめっちゃキレてるやん。
ガレインさまの入場から少し遅れてアルフォンス殿下が入場するとアルフォンス殿下は王族が観覧する席に向かい大仰な礼を取った。
「ハッ!俺の相手は貴様か!ふん、俺の相手としては少々見劣りするが」
「はじめ!」
「いいだろ」
ガンッ!!!!
ガレインさまが軽く弾いた剣に当たったアルフォンス殿下の剣が場外に飛ばされた。
「は?な!貴様!卑怯だぞ!」
「何を言っている、試合はとっくに始まっている」
「ぐっ、ぶ、無礼な!」
「降参するなら早くしろ」
「ふ、ふ、ふざけるな!」
ガレインさまが進言した言葉も聞かず、予備に提げていた二本目の剣をアルフォンス殿下が抜いて大振りに振りかぶって走ってくる。
ガレインさまはため息を吐き剣を鞘に納めてアルフォンス殿下の剣を軽く躱すとガラ空きになった鳩尾に拳を叩き込んだ。
「げっ……かっ、あ」
アルフォンス殿下は何ごとか呻いて前のめりに倒れた。
「きゃぁぁぁぁぁアルさま!あなた!なんてことを!」
クララ嬢が飛び出してガレインさまに食ってかかるのを教師が止め、側近の一人がアルフォンス殿下を抱えて退場していく。
「勘弁してくれ」
「おめでとうって素直に言いにくい」
「俺も勝った気はしないから」
疲れ果てた顔色をしたガレインさまが控室に戻る。
「レオナ、頑張ってこいよ」
「うん!」
去り際にレオナさまの頭に手を乗せたガレインさまがレオナさまに声をかける。
レオナさまが嬉しそうに笑った。
乙女やね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます