第29話 闘技大会
二学期が始まった。
案の定、外堀をサクッと埋められたイルマさんは一時逃亡を図るもしれっと連れ帰られてカイン殿下の婚約者候補になっていた。
何があったかは聞かない方が良さそうだったので聞いていないけど、すっごくいい笑顔のカイン殿下から新学期早々報告を受けて、涙目になっているイルマさんの肩を叩いた。
「でも、ほら、私は婿入りするわけだし妃教育とかもないからね」
「それはそうなんですけど」
「ふふふ」
カイン殿下の黒い笑みを見なかったことにしてユーリさまと目を合わせた。
「兎に角、おめでとう」
「うっ、ありがとう、ございます」
肩を落としているイルマさんだけど、カイン殿下とはそれなりに上手くいっているのか、時々私たちには見せない砕けた表情をカイン殿下に向けている。
まあ、幸せならええんちゃう?
二学期の行事、目玉になるのはやっぱり闘技大会だろう。
魔術、武術に分かれてそこから幾つかある試合に出るトーナメント形式の大会。
因みに全生徒が参加する。
本戦の前に学内で予選があり、本戦は学外から来賓や観客を招いて行われるため、試合に出る生徒の中には将来がかかっている者もいる。
観客や来賓もまた将来有望な生徒を見に来ている。
魔術部門には対戦、技能、表現の三部門があり対戦はそのままの意味、技能は魔術の精度や速さを競う、表現は芸術性を競うもの。
私は表現にエントリーしている、アレックスさまとファルマさまは対戦をユーリさまとアリアは技能を選択している。
武術部門は対戦と演武、技能に分かれている。
対戦は文字通り対戦、演武は演舞も兼ねており対戦とは違う華々しさで観客からは人気の演目、技能は弓や投擲など遠距離での正確さなどを測るもの。
ガレインさま、ハインさん、レオナさまは対戦をイルマさんは演舞をカイン殿下は技能を選択している。
私たちは予選までの間、座学と並行し本戦を目指す。
予選まで一カ月、本戦まで一カ月と準備に充てる期間の長さから学園としても闘技大会に寄せる期待がわかるというもの。
ただ、今年は教師の推薦枠というのが早々と発表された。
今大会のみ異例の処置。
二年連続予選敗退のアルフォンス殿下を今年は本戦に出すためらしい。
大丈夫かいな。
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