第27話 期末試験
皆での話し合いの後、綿密に対策を練った甲斐もありアルフォンス殿下とクララ男爵令嬢に会うこともなくなった。
相変わらずEクラスにのみ蔓延る噂も他では耳にしなくなっていた。
そうこうしているうちに期末試験が行われた。
この期末にある試験、一年生二年生ではそこまで問題にはならないのだけれど三年生になるとそうはいかない。
ここを規定のラインに到達出来ていない、前世的に言えば赤点だった場合夏季休暇返上で補習となる。
夏季休暇が潰れてしまうことの問題は先の就職先などへの働きかけを一斉に始める時期でもある、就職しない高位貴族にはあまり関係ないと思われるが、次代を見越した顔合わせの社交が活発になる。
参加できないということは、学園での成績が察せられてしまうのだ。
勿論、夏季休暇が全てではない、騎士や魔法師なら二学期にある闘技大会の結果が大きく関わる、然し高位貴族が補習で社交に出れないなど醜聞でしかない。
そのため六月になると私たちは勉強会と称して集まる事が増えた。
聖女試験を年末に控えているアリアもまた期末試験を落とせないらしく、普段の活発さはなりを潜め真面目に勉強をしていた。
ガレインさまとハインさんは座学が苦手と言いながらも、飲み込みが早く理解してしまえばすんなりと覚えていく。
お互いに苦手をカバーしながら一カ月近く勉強会を繰り返し挑んだ期末試験、脱落者はなく私たちは皆夏季休暇をもぎ取った。
「夏季休暇は王都を離れるつもりだけどマリーはどうする?」
「ユーリさまは領地の引き継ぎもあるもんねえ、私も領地での社交を始めてええやろか」
「うん、マリーがやる気になってくれてるなら嬉しいな、私では女性の社交は出来ないからね」
「ユーリさまの力になれるように頑張りますね」
「そうだ!マリーに相談したかったんだ、一度友人たちを領地に招待しないかい?」
「良いんですか?是非!」
ユーリさまと相談しながら招待状を作成し友人たちに渡してから私とユーリさまはランドール領に向かった。
ランドール領からユーリさまが引き継ぐ領地であるブロッサム領へ向かう。
初めてここを訪れた時からいずれ自分たちが住むためにと重ねてきた改装ですっかり馴染んだ領館に着くとホッと肩の荷が降りる。
「例の魔道具を使った調理法だけど、一カ月くらいでかなりの利益を出しているみたいだよ」
「良かった!」
「それに、マヨネーズだっけ?あれの評判もかなり良いみたい」
オリエンテーションの結果がこんなにすぐに活きてくれるのもユーリさまの手腕のひとつだろう、決断から実行までの行動力は普段の朗らかな印象からは想像出来ない。
前世の知識が受け入れられるだけではなく、彼のために活かせることが出来るのは矢張り嬉しい。
王都の学園から離れたことに加えて来週には友人たちがしばらく滞在する、案の定というかアルフォンス殿下とクララ嬢は補習になったらしく夏季休暇中は様々な不安ごとから解放されゆったりと過ごせそうだ、社交はあるけど。
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