第24話 編入生と変化

 オリエンテーションを無事に終えて最終的なレポートと魔道具を提出すると、ようやく日常が戻ってくる。

 普段の学園生活で他クラスと交流する機会はあまりないのだけど、オリエンテーションで一緒になった縁が続き昼食にイルマさんハインさんアリアが加わることが増えた。

 私とユーリさま、アレックスさまファルマさま、ガレインさまとレオナさま、それにイルマさんハインさんアリアとかなりの人数になるため、全員が揃う時は中庭の片隅でシートを広げて座るようになった。

 

 「聞きました?アルフォンス殿下のお話」

 レオナさまが眉を顰めて話を始めた。

 「なんでもEクラスに編入してきた男爵家の庶子に入れあげているらしくて随分と悪評が聞こえてくるんですよ」

 「あ!私も見かけました!大丈夫なんでしょうか、あれ」

 アリアの心配そうな顔に少し胸騒ぎを覚えた。

 「かなり目に余る言動が増えているらしいね、取り巻きの連中が困っていたよ」

 アレックスさまがやれやれとため息を吐いた。

 「結構貢がせてるらしいって話は聞いたけど」

 ファルマさまもため息混じりに話している。


 「おい!マルグリッド!」

 突然名指しで怒鳴られて食べていたサンドイッチを詰まらせて慌ててお茶を飲んだ。

 振り返った先に見たことのない少女の肩を抱いて指を私に向かい差すアルフォンス殿下が居た。

 「貴様!公爵家であることを傘に着て好き勝手しているそうだな!」

 「は?」

 は?

 「くだらぬ嫉妬で彼女を虐め、下位貴族や平民を虐げていると聞いたぞ!ふん!矢張り貴様はダメだな!」

 何が?

 「まあ謝るなら今のうちだぞ!ハハハ」

 そう言って去って行ったアルフォンス殿下と少女の背中を唖然と見送る。

 

 「え?何?え?」

 レオナさまが戸惑っているけど、私も訳がわからない。

 「うん、ちょっと父に報告しておくよ」

 ユーリさまが笑みを浮かべ……ぞわりと悪寒が走った。

 「全部心当たりがないのがすごいですね」

 アリアの言葉に頷く。

 「嫉妬って何にでしょう」

 「ランドールさまとは仲良くしてらっしゃるし成績もトップでいらっしゃるのに何にマルグリッドさまが嫉妬してると?」

 「一緒に居たマルグリッドさまを睨んでらしたのが例の編入生ですよ」

 全く顔の印象がないのはアルフォンス殿下のせいだろうけれど、一方的に言われた言葉の意味がわからずただ私は呆然としていた。


 数日後、イルマさんがこっそり教えてくれた。

 「少しおかしいんです、Eクラスだけで広がっている噂なのですがマルグリッドさまが編入生を虐めているという話になっているんです」

 「私が?編入生のことは全く存じ上げないのに?」

 「ハインが今調べてくれていますが、Eクラス以外は全く信じていないようなのですがEクラスだけは様子が違うようです」

 「Eクラスだけ……」

 「はい、どうやら噂の元がアルフォンス殿下らしく、私ももう少し調べてみますね」

 イルマさんに礼を言ってユーリさまに会いに行くと、ユーリさまも噂を聞いたようでいつもの陽だまりが陰っているように見えた。


 ほんっと、アルフォンス殿下が絡むとロクなことにならない!

 なんでやねん!

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