第23話 オリエンテーション最終日
いよいよ出来上がった魔道具「たこ焼き器」もどきで実験です。
「タコパーだ!タコパーだ!」
アリアが浮かれてるけど、私も内心ワクワクが止まらへん!
まずはキッチンに行き具材を用意する。
たこ焼き型魔道具とホットプレート型魔道具はリビングに置かれた。
小麦粉はこの世界で主食に使われているから入手に問題はなかった。
卵も同じく。
そしてここから、出汁のための昆布や鰹節トッピングに使うあおさ、この辺りの乾物はイルマ嬢の実家のある領地で地産地消していたもの
そして大事なタコとソースはランドール領の港にある小さな食堂で見つけた。
このソースを見つけたからこそ、たこ焼きが食べたくなったんだよね。
マヨネーズに使う卵と油と酢は苦なく入手出来るため、これも作るのだけど。
紅生姜は存在しなかったのでこっそり自作した。
梅酢がなかったから酢で作ったけど悪くない出来。
生地となる小麦粉に出汁を加えて混ぜながら卵を入れる、ダマにならないようにシャカシャカと混ぜていたら全員の視線が集中していた。
「ど、どうしました?」
「あ、いえ、随分と手慣れていらっしゃるなぁと」
貴族令嬢は料理をしないのが常識なだけに不思議そうに私の手元に視線が集まるのは仕方がない。
「趣味で時々作るので」
「珍しいですよね」
「そ、うですね」
私としてはそんなことよりたこ焼きが大事なので、口を動かしながらも手を動かす。
タコを一口大に切り、紅生姜を細かい千切りにしていく、ネギを小口切りにして材料の下準備が完成。
いよいよ魔道具を起動する。
アレックスさまが起動のため魔石にゆっくり魔力を通す、鉄板に熱が行き渡る。
ここまではかなり強い熱、少し生地を落として生地が固まるのを確認して油をひき生地を流し込む。
ジュッと軽快な音を立てた鉄板の半円の窪みにタコや紅生姜、ネギを入れて、鉄板の熱を少しだけ下げる。
順調に温度が管理されているのを確認して、私は竹串に似せて作った木製の串を使いたこ焼きをくるりとひっくり返した。
「お?うぉ?丸くなったぞ?」
「へぇ、こうなるのか」
「すごい!」
くるくると生地を球体にして鉄板の熱を下げる。
あらかた形が整った所で別の魔石に魔力を通すと鉄板が微振動を始めた。
勝手にくるくる回るたこ焼きを全員で見つめる、なかなか異質な光景が出来た。
「そろそろかな」
こんがりと狐色に焼けたたこ焼きを串でサクサクサクと三つまとめて持ち上げると皿に盛る。
全部盛ってからソースとマヨネーズ、鰹節とアオサをふりかけ全員の前に置いた。
木製のピックを刺して「どうぞ」と差し出し、私もひとつ小皿に置いた。
「熱いから気をつけてね」
「はーい!ふぁっ熱っうまっ」
「何コレ!美味しい!」
「タコの食感が面白いね」
「生地のサクサク感と中のトロッとした二つの食感も面白い!」
「あー懐かしい」
「アッ熱っ熱っ」
「ハイン!慌て過ぎよ」
絶賛だった、懐かしい味にじんわり涙が出そうになる。
「これがマリーの前世の味なんだね」
「粉もんって言われるものですね」
チラッと見ればホットプレート型の魔道具。
キャベツに似た葉野菜を思い出してキッチンに向かうとザクザク千切りを作る。
あれだけでは勿論足りないメンバーがたこ焼きを焼くのにチャレンジしているのを尻目に、材料を用意してホットプレート型の魔道具を起動させた。
しばらくたこ焼きに夢中になっていたメンバーの中からアリアが私に気付いた。
「マルグリッドさま……それはもしかして、お好み焼きじゃあ……」
「もうすぐ焼き上がるから小皿を並べてくださる?」
「はい!マルグリッドさま愛してる!」
アリアが元気に返事をする、微笑ましく見ているとするっと腰に手が回った。
「マリーを一番愛してるのは私なんだけどな」
「ユーリさま……」
「そこ!すぐイチャイチャしない!」
アレックスさまがたこ焼きを食べながらそう指摘すると全員から笑顔が溢れた。
お好み焼きも好評やった。
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