第21話 オリエンテーション一日目
様々な協力を得て、材料となるものを揃えた私たちは学園所有の山脈にある宿泊施設のコテージに到着した。
幾つか点在するコテージには他のチームがいるのだけれど、この三日間は接触することもないと思われる。
広場が幾つかあり、実験などが行えるように調整されており、衝撃に対する結界なども用いられていて近くに教師と衛兵も居るため、安全に実習が行えるように配慮されている。
ただ、外部との接種が出来なくなるのでその間は自分たちで食事などは賄わなければならない。
「けどよく材料が揃えれたよね、皆のおかげだね」
「そうですね、皆には感謝しなきゃなりませんね」
「感謝なんて……それにまだ出来上がったわけではないので」
和気藹々と感謝を述べながら初日の準備に入る。
女性陣と男性陣で部屋を分けて、作業部屋に材料を置く。
生ものはキッチンに持って行き保管用のアイテムボックスに入れて、皆で昼食の準備を始めた。
「アルダイムさまはお料理もなさられるんですね」
はぁぁと感心しながら葉野菜を千切るイルマ嬢に私は苦笑を返した。
「令嬢らしくはないのですが、お料理が好きなのです」
「淑女としてはお料理で怪我なんてしてはいけないですしね」
ファルマさまはそう言いながらも器用に包丁を使い野菜を切っていく。
「刺繍で指に針を刺すのは構わないってちょっとわからないんですけどね」
とアリアが言うとキッチンに入った女性陣は全員で吹き出した。
朝食と昼食は女性陣が、夕食は男性陣が担当する。
三日間なので清掃などは散らかした本人がするということになっているのでそう困りはしない。
お風呂に関しては魔道具が使用されて三日間であればいつでも入浴が出来る。
かなり充足した施設でありがたい。
侍女や侍従を連れていけないのは不便だけれど、自分たち以外の制作には内密にしなければならない場合もあり情報の漏洩を防ぐ目的もあるらしい。
詳しくは知らん。
出来上がった昼食を食堂に並べて昼食を取る、話題は午後から早速開始する魔石への魔法陣付与。
こういう事になると魔導家の側面を持つアレックスさまとファルマさまが頼もしい。
先ずは数種類の熱源用魔石の制作をするとのこと、私も魔法は使えるのでお手伝いをすることになっている。
熱源の前に温度制御の魔法陣を刻むらしい。
あれこれと話し合ううちに昼食も終わり片付けを皆で済ませて作業部屋へと向かう。
拳の半分ほどの大きさの魔石に皆で温度制御の魔法陣を刻む、とは言っても簡単に出来るものではないためひとつ刻むのにも二時間三時間はかかる、魔石に刻んだ魔法陣は魔力を流せば発動するが、今回は魔法陣が順に起動するような制御も必要になる、この魔法陣をアレックスさまとファルマさまが作ってくれた。
なんとか全ての魔石に魔法陣を刻む作業を終えたところですっかり日が沈み夜になっていた。
男性陣がキッチンに向かい女性陣で作業部屋を片付ける。
ようやく整理がついた頃に呼ばれて食堂へ向かうと、自宅で食べるものと遜色ない夕飯が並んでいた。
「給仕は居ないから全部並べちゃったけど」
と笑う男性陣の料理は見事だとしか言えない。
「凄いです!」
「あら、美味しい」
「アレックスさま、お料理出来たのですね」
「いや出来ないよ?僕は野菜をちぎっただけだし」
そう言えばファルマさまも昼は野菜を千切っていたなと思い返す。
「ファルマさまと同じ!すごく仲が良いんですね!」
屈託なくいうアリアにファルマが「もう」と拗ねる。
皆の笑い声に包まれて一日目が終わった。
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