第16話 乙女ゲームの開始
アルフォンス殿下に絡まれたり、素っ頓狂な殿下のスピーチを聞いたりしたのが懐かしくなるほど穏やかな学生生活も二年が過ぎ、いよいよ今日から三年生。
ユーリさまが調べてくれていたのだけど、アリア嬢はやはり今日編入してくるらしい、Cクラスに。
はい、既にアルフォンス殿下との接点が薄いのは置いておいて、アリア嬢はかなり優秀。
実家の男爵家のゴタゴタはあるんだろうけど、市井に居た頃からしっかりと勉強をして男爵家に入ってからは令嬢教育も相当頑張っていたらしい。
あれからアルフォンス殿下は時々遠くから罵声を浴びせてくることはあれど、都度報告は国王陛下にあがっているとか。
おかげで過度に絡まれたりすることもなく、私は三階にある生徒会室の窓から新入生が登校するのをユーリさまと眺めている。
ユーリさまは今代の生徒会長になった、私は会長補佐。
副会長にはカイン殿下、書記にアレックスさま他生徒会役員にガレインさまファルマさまレオナさま。
ゲームやとアルフォンス殿下が生徒会長になんやけど、実際のとこあれがあれなんで去年の会長選出選挙は悪夢の一日と噂されるくらい酷い結果やった。
「兄上の存在が王家始まって以来の愚図歴史だよね」とはカイン殿下が選挙結果を見ながら言った言葉。
なかなかに辛辣。
「私は兄上のお守りと尻拭いのために学園に通っているわけではないのですよ」と国王陛下に言ったらしい、指名制度の適用された副会長の座をアルフォンス殿下にと側妃さまからランドール公爵家に通達された翌日、ユーリさまや私の前でカイン殿下が話された。
「副会長は慣例通り二年生首席が行うべきでしょう」と笑ったカイン殿下に誰も反論できなかった。
で、順当であれば一年生のクラス代表として生徒会に所属するのがCクラス代表のアリア嬢、ゲームではここでアルフォンス殿下を始めとする攻略対象と接点が生まれる。
そう、ユーリさまを除けば他の攻略対象のうち三人はここに居るんよねぇ。
ただ、私たちはアリア嬢の恋愛自体には関与しないとユーリさまと決めたんよね。
馬に蹴られたくもあらへんし、豆腐の角に頭ぶつけたくもないしな。
アリア嬢にも恋をしたりしなかったりその権利はあるんやから、それを私が奪うんはなんかちゃうやん。
言うてファルマさまやレオナさまとも仲良くなってるんで二人の婚約者であるアレックスさまやガレインさまとの恋はあんまり応援したくあらへんねんけど。
万が一アルフォンス殿下とアリア嬢が結ばれたって婚約破棄とかはあり得へん訳やし。
「あ、彼女だわ」
校門を抜けて歩く一人の生徒に目が行く、新入生ばかりの中だと少し大人びて見える。
恐らく編入手続きと入寮の手続きなのだろう。
「大丈夫だよ、私が居るからね」
ユーリさまが背後から私を抱きしめながらそう言う、一人称が僕から私になったユーリさまはすっかり男らしくなって、陽だまりのような雰囲気はそのままに随分格好良くなった。
私はユーリさまに笑って返すと頭にキスを落とされる。
こんなやり取りも自然になっていて、周囲からも生温かい目を向けられている。
「マリーは可愛いからね、虫除けだよ」
とかユーリさまは言い出すし。
私はユーリさまにわからないように深呼吸をした。
変わったこともあれば変わらないこともあった。
だからこそ卒業パーティーが終わるまで油断出来ない。
これから一年がガチの踏ん張りどころやろうからな。
はぁぁぁぁ、しんど。
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