第15話 新入生代表

 本来、入学式での新入生代表スピーチは入試にて首席を取った生徒が行う習わしなのだけど、首席を取ったユーリさまは私と共に教室でのんびりされている。

 入学式とは言っても教室にある巨大な投影機で学長の挨拶や先撮りした国王陛下の祝いの言葉、在校生代表の生徒会長のスピーチ、新入生代表スピーチが流されるのを教室で見るだけ。

 楽やね、前世やったら講堂か体育館に整列して硬い椅子に座って長い話聞かんなあかんかったからね。

 

 クラス分けでの校舎の違いやこういう行事を教室で行うのは、過去の様々な不祥事の結果らしい。

 創立時こそ学園内身分平等なんて掲げてたせいで、高位貴族の子息女へ下位貴族の子息女が擦り寄って仕掛けまくったハニートラップの結果はただ混乱と混沌を生み出したらしい。

 なので、基本的な学園生活はAからDクラスまでの入った校舎とEFクラスが入った校舎が別になっていて不用意にEFクラスの生徒がこちらの校舎に侵入することを厳しく禁止している。

 当然ABクラスとCDクラスも不可侵になってはいるんだけど。

 

 こんな状態なのによくゲームのアリア嬢はアルフォンス殿下と交流出来たなぁ、今のアルフォンス殿下ならわかるんやけど。

 そもそもお助けキャラのユーリさまに会うなら、せめてBクラスには入ってないと厳しいんちゃうんやろか。

 あの日見たアリア嬢はそんなに悪い子に見えなかったしなぁ。


 詮無い心配を取り留めなく考えているうちに新入生代表の挨拶が始まった。


 「ははは!この俺が!第二王子アルフォンスだ!」

 新入生代表……え、これが私たちの代表?

 唖然と投影機に映し出されたアルフォンスを見た、ちょっと見なかったら良かったな。

 「貴様らは幸運だぞ!この俺と学友になれるのだからな!その幸運に感謝しせいぜい励が良い!」

 な、な、何様やねん……王子さまやったわ。

 得意満面、横柄な態度は邪智暴虐。

 マジかぁ、これ私らの代表かぁ。

 「例外なんて作るもんじゃないね」

 隣に座っていたユーリさまがぽそりと呟く。

 本来であれば首席であったユーリさまがスピーチを行うはずが、首席を取れなかった第二王子のせいで王族の体面を優先した今回の人選、失敗だと思う。

 ただ、何故かユーリさまは機嫌が良い気がするのだけど。

 周囲の反応は失笑。

 そりゃそうだわ。

 

 無事一日目を終えて王都のタウンハウスに帰る。

 学生寮はFクラスや遠方から入学した貴族などが使用している、タウンハウスがある家は基本的にそちらから通うことになっている。

 そのため私はアルダイム公爵家の持つタウンハウスに、ユーリさまもランドール公爵家のタウンハウスに帰宅した。

 制服を脱いで漸くひと息つく。

 気になるのはアルフォンス殿下の態度だけど、接近を禁止されている上に校舎も違う、当分は大丈夫だろう。

 ユーリさまもいるし。

 

 私は先行きに不安を残しながら眠りについた。

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