第14話 学園入学
十五歳の春、乙女ゲームの舞台となる学園にいよいよ入学です。
あれからアリア嬢に関しては特に変わりはなく、私は順調にユーリさまと交流を続けています。
少し変わったことがあるとすれば、私とユーリさまは婚約を既にしているため男の子が来るお茶会などの参加はトラブル防止のため不参加が許され、徹底的にアルフォンス殿下との遭遇を避けたこと。
アルフォンス殿下の側近候補から外れた面々はカイン殿下の側近候補となったこと、そのためユーリさまが主催となるお茶会ではいつも集まるメンバーの中にカイン殿下が入ってきた。
ちなみにユーリさまはアルフォンス殿下を口実にカイン殿下の側近候補からも外れたらしい。
アルフォンス殿下は結局婚約者どころか婚約者候補すら未だに決まらないため、後ろ盾が弱く学園での成績が入学前からかなり期待されているとか。
入試の結果がどうなのかってとこやね。
蛇足だけど、妹のマリエンヌは来年婚約者のいる隣国の学園に留学が決まっている、横繋がり大事だからね。
学生生活である程度は知り合いを増やした方が結婚後に諸々やり易くなるんだとか。
今からちゃんと隣国に行くために勉強してるんやで?めっちゃ偉いし可愛い妹やろ。
アルフォンス殿下の件でマリエンヌと仲良くなったのは一番の収穫、これだけはアルフォンス殿下に感謝しとるんよ。
入学式当日、私はアルダイム公爵家の馬車に乗り学園に向かった。
門前で馬車を降りれば先に着いていたユーリさまが馬車を降りるため私をエスコートしてくれた。
たった一年ですっかり成長されたユーリさまは身長も高くなって並んで歩けば見上げなければ会話も出来なくなってしまった。
「マリーおはよう」
「おはようございます、ユーリさま」
差し出された手を取りながら挨拶を交わすのも随分と慣れてきた。
二人で並んで校門を潜る、いよいよここが乙女ゲームの舞台となる王立高等学園、入学から二年後ヒロインであかアリア嬢が編入してくればゲームがスタートする。
本当なら不安やったんかもしれん、けどな、ここで生きる私たちはもうすっかりゲームの台本とはかけ離れてしもおとるんや。
隣を歩くユーリさまが私に穏やかで陽だまりのような笑顔で微笑みかける。
いやぁ、ホンマええ男捕まえたわ。
「待て!貴様!だ!マルグリッド•アルダイム!」
耳障りな甲高い声で名前を叫ばれて振り向くとアルフォンス殿下が仁王立ちしていた。
は?なんでおるん?
いや居るんはしゃあないんよ?だって同じ学園に入学するんやから、そうやなくて何で名指しで呼ばれたんや?
「いい身分だな!平然と男を侍らせて!俺はあれから大変だったんだぞ!」
知らんがな、自分のせいやろ。
「貴様のせいだぞ!」
せやからアンタのせいやがな。
そもそも私への接触は禁止されとるはずやろ。
何してんねん。
「ふふん!おおかた貴様への接触禁止を盾にするつもりだろうが、接触しなければ良いのだろう!俺は貴様に触れておらんからな!」
屁理屈や。
段々腹立ってきたな。
「っ殿……」
反論しようとしたところでユーリさまが私の前に出た。
「殿下、遅刻なさいますよ」
ユーリさま?
「殿下のクラスはEクラスでしたよね、教室はこちらの校舎ではなくあちらの校舎になりますので急がないと遅刻なさいます」
和かに話してるけど、めっちゃはっきりEクラスって言うたよ?
入試の成績順に振り分けられるクラス分け、私やユーリさまアレックスさまファルマさまはAクラス、ガレインさまとその婚約者であるレオナさまはBクラスここまでが少人数制になっているいわゆるエリートクラス、ABクラスは高位貴族の子息女がほとんど、大半の生徒はCクラスやDクラスになり貴族でかなり成績に問題があるのがEクラス、Fクラスは平民のみのクラス。
学ぶ内容が違うのでFクラスは平民のみのクラスになっているけど、とはいえ間口の狭い入試を戦い抜いた才人ばかりなので実質Eクラスの成績がダントツで悪いっちゅうこっちゃ。
それをユーリさまがシレッと言うもんやからアルフォンス殿下は気付いてはらへんけど、周りの生徒の嘲笑がえげつない。
取り巻きの子息らも真っ青な顔してはるやん。
「ふむ、仕方あるまい」
くるりと方向を変えて側近候補の令息を従えたアルフォンス殿下が去っていく、校舎間違えてはるんやけど?そっちは食堂のある特別室の校舎やで?誰も止めへんの?そう。
私?止めへんよ?
「マリー、大丈夫?」
「はい、ユーリさまが助けてくださったので」
「あの人も困ったものだね」
「私のせいで、ごめんなさい」
「マリーのせいじゃないでしょ」
まあ、せやね。
「父上に連絡をしておかなきゃね、さ、マリー行こう」
私たちはAクラスのある校舎へ向かった。
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